役に立つ「闘病記」の探し方

治療法選択のヒントになり励まされる

 がんや脳卒中、心筋梗塞など命にかかわる大病を患ったとき、患者や家族の精神的ショックは計り知れない。そんなとき心の支えになり、治療法選択のヒントにもなるのが「闘病記」だ。闘病記の特設コーナーを設置する図書館や医療施設も増えるなど、ガ然注目を集めている。

 書店でも図書館でも、闘病記は大抵バラバラに並べられていて、タイトルに病名が入っていない限り、読みたい本を探し出すのは難しい。そんな闘病記をひとつのコーナーに集めて置いているのが、東京・南麻布にある都立中央図書館の「闘病記文庫」だ。
「『闘病記文庫』は読みたい本がすぐに見つかるように、全931冊を221の病気別に分類しています。探しやすいと評判です」(同図書館サービス部情報サービス課自然科学係長・中山康子氏)
 たとえば肺がん52冊、胃がん49冊、脳卒中49冊、心筋梗塞9冊……。蔵書の充実ぶりが目を引く。どんな本が参考になるのか。
「長年読まれている闘病記もいいですが、ロングセラーは情報が古く、書かれている治療法が通用しない恐れもあります。医学書や新しい闘病記で情報を補充した方がいい。また著者が患者か家族かで視点が変わるので、両方を読み比べることも重要です。客観的に数冊を読み込んでいくと、ひとつの情報に目を奪われることなく、病気の全体像がつかめ、励みになります」(中山氏)
 同図書館は閲覧のみ可能。ほかでは「首都大学東京図書館情報センター荒川館」や東京・築地の「るかなび」、「宇都宮市立図書館」「静岡がんセンター」などで閲覧することができる。HP「闘病記ライブラリ」〈http://toubyoki.info/〉で闘病記の検索ができる。
 家で読みたい人は、闘病記専門古書店「パラメディカ」〈http://homepage3.nifty.com/paramedica/〉にアクセスすれば購入可能。取扱書籍は2000冊に上り、元値の半額程度で販売している。


ット上の闘病記は玉石混交ながら、中には非常に役立つ“掘り出し物”があるのだ。
 6年前に食道がんを宣告されたTさん(59歳)は、「ガン病棟からの脱出」〈http://yamai.org/index.htm〉というサイトに出合って、切らずにがんを克服した。「切らないでがんと闘っている人たちの体験記がとても励みになる」と言う。
 HP「34歳 脳梗塞患者」〈http://www5b.biglobe.ne.jp/~takeuchi/〉を“バイブル”にしているのは、Oさん(50歳)だ。
「玉石混交のネット世界で有益といわれるサイトにはいくつかの共通点がある」そうだ。
「症状やそれに対する処置が余すことなく記されているもので、情報の更新が頻繁なサイトが役に立ちます。病気と闘う姿勢が、情報の詳しさや更新頻度に表れると思いますから。掲示板で交流を図っている場合は、その参加者数が多い方がベターです」(Oさん)
 各闘病記のサイトにはリンクが張られている。これらのサイトをたどっていくのも、役立つサイトを探し出す近道だという。
 関係者の話を参考に“役立つ闘病記”を3冊挙げると――。
●「脳梗塞からの復活」(加藤博・マキノ出版)
 地下鉄の車内で突然発病した50代男性が後遺症を乗り越えて、職場復帰するまでの記録。
●「狭心症 心筋梗塞でも生き生き元気に」(高木誠・保健同人社)
 心臓専門医が心臓病にかかった体験が語られている。
●「いい人はガンになる」(吉川勇一・KSS出版)
 たばこは? 酒は? 食べ物は? 闘病を通して見えてくるがんとの付き合い方を探る本。

top>データベース7>