梅雨時症候群に気をつけろ

うつ病発しやすく、自殺も増える

 雨が多く湿度が高い梅雨時の病気といえば水虫だろうが、もっと怖くて厄介な病気や症状がたくさんあるのだ。“梅雨時症候群”ともいうべきそれらをリストアップ、細菌学が専門の医学博士・中原英臣氏に聞いた。
 まずは湿気で豆類に生えるカビの怖さだ。
「ピーナツやピスタチオなどに生えるアスペルギルスフラブスというコウジカビの一種は、アフラトキシンという毒素を出します。これは、微量でも肝硬変や肝臓がん、腎臓がんを発症させることが分かっています。加熱しても、毒性が消えないので要注意です」
 これらの豆には殻があり、カビに気づかず食べてしまう恐れがある。体内で蓄積された毒素が細胞をがん化させ、発症するケースが一般的だが、急性肝炎になる人もいるから要注意だ。
 風呂場のカビも怖い。この時季に発生しやすいトリコスポロンというカビを風呂掃除などで肺に吸い込むと、夏型過敏性肺炎になる。
「初期症状はせきや微熱などで、風邪と間違いやすい。そのまま何の手も打たずに放置すると、肺が線維化し、最悪の場合は死に至ります」

 意外かもしれないが、うつ病も“梅雨時症候群”のひとつだ。
「冷房の効いた部屋から屋外に出ると、急激な気温差に自律神経の調節が追いつかず、自律神経失調症になることがあります。頭痛やめまい、肩凝り、下痢などが主な症状ですが、これに人間関係のトラブルなどが重なると、うつ病を発症する人がいます」
 厚労省の人口動態統計特殊報告によると、月別の自殺者数は例年、4、5月が最多で、6、7月の梅雨時がこれに次ぐ。気象と病気の関係を研究する専門家の間では、この時季にうつ病を発症する人や自殺者が多いことは今や常識になっている。
 梅雨時から使い始める冷房は、カビの“巣窟”だ。フィルターの掃除をせずに、いきなりフル稼働させると、カビがまき散らされ、鼻炎やぜんそくなどのアレルギー疾患や気管支疾患の原因になる。
 では、“梅雨時症候群”にやられないためには、どうすればいいか。
「市販の除湿剤や防カビ剤を使って、カビの繁殖を食い止めることはもちろんですが、温かい食品を食べたり、適度な運動をするなどして、発汗を促し、自律神経を働かせることも重要。免疫力が落ちたときが一番感染しやすいので、十分な睡眠を取ることも大切です」
 カビは酸に弱く、浴室や洗濯機は酢で掃除すると効果的だという。

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