心筋梗塞で若死にしない7ヵ条

「絶対やめろ」と「もっとやれ」を実行

 ラグビー元日本代表監督の宿沢広朗氏が急死した。三井住友銀行取締役専務執行役員としてバリバリ働いていた、55歳の屈強な元ラガーメンの命を奪ったのは心筋梗塞。改めてこの病気の怖さを思い知らされた人も多いはず。そこで、働き盛りのサラリーマンが心筋梗塞で若死にしないためには何をやっちゃダメで、何を積極的にやるべきなのか。榊原記念病院の伊東春樹副院長に聞いた。

 動脈硬化で冠動脈が詰まり、心臓に血液が届かなくなって心筋が壊死を起こすのが心筋梗塞だが、想像を超える厄介な病気なのだ。
「心筋梗塞が怖いのは、血管がまだ半分も詰まっていない状態から一気に完全閉塞して起こる発作が、全体の6割以上を占めること。その段階では、階段を上ると胸が苦しいなど事前の自覚症状はありません。患者の6割以上は、何の前触れもなく突然発作に襲われているのです」
 心筋梗塞の主な危険因子は、心臓病の家族歴、高血圧、肥満、高コレステロール血症、糖尿病、たばこ、運動不足の7つ。サラリーマンにとっては、身に覚えがあるものが多いはず。
「危険因子を取り除くための節制はもちろん必要ですが、発作の直接的な引き金となる行動を避けたり、発作を招かない予防行動を取ることも重要です」
 それは何かを、具体的に紹介しよう。

【×】…喫煙
 たばこは動脈内壁を傷つけて動脈硬化を促進するだけでなく、発作の引き金にもなる。
「たばこを吸うと交感神経が活発になり、血管が収縮して血圧が上昇します。また、血液の粘度も高まり血栓ができやすくなって、血管がつまってしまうのです」
 喫煙者の心筋梗塞の発症リスクは、非喫煙者の2倍。発作が心配なら即刻やめるべきだ。宿沢氏もヘビースモーカーだったという。

【×】…激務や過度の疲労・ストレス
「徹夜明けや睡眠不足が続く、仕事のストレスがたまる、といった状態の後に発作が起こるケースが多いのです」

【×】…脱水状態になる
 体の水分が不足すると、血液の粘度が高まり、血管が詰まりやすくなる。夜遅くまで仕事をし、翌日に炎天下でロクに水分も取らずゴルフをするなんてことは論外である。
「長時間のフライト中に酒を飲んで発作を起こすケースも多い。機内は湿度が十数%と低いうえ、飲酒による利尿作用で知らず知らずに脱水症状を起こしているのです」

【×】…軽い運動でムリをする
「発作を起こしやすいスポーツは、ゴルフが2位で、1位はハイキングです。ともに軽い運動ですが、少し苦しさを覚えても途中で引き返せず、連れもいるため、ついムリをしてしまうのです」
 宿沢さんも、家族連れも歩くような登山の途中で倒れた。「この程度の運動で……」と甘くみるのは厳禁だ。

【○】…定期的に有酸素運動をする
「1日30分〜1時間の早歩きなど有酸素運動を行うと、血管の詰まりが進みにくくなり、改善するケースも見られます」
 危険因子の肥満や生活習慣病も改善できるので、一石二鳥だ。

【○】…少量のアスピリンを服用する
「アスピリンには、血小板の働きを抑え、血栓ができるのを防ぐ効果があります。市販品でも大丈夫ですが、常用することのリスクも伴うので、必ず医師に相談を」

【○】…歯周病を治療する
 意外だが、歯肉炎などの歯周病が動脈硬化の原因になるというのだ。
「歯周病があると、人間ドックの検査項目にもある炎症マーカー“CRP”が高くなります。この数値が高い状態が続くと、動脈硬化や心筋梗塞を起こしやすいことがわかっています。慢性的な歯周病があったら、早めに治療してください」

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