怖いしびれを見逃すな


 手や足に感じるちょっとしたしびれ……。痛みに比べて気にしない人も多いが、実は命にかかわるような深刻な病気が隠れていることがある。杏林大学病院神経内科の作田学教授に、「重大病のサインであるしびれ」を教えてもらった。

「手や足をはじめ、体のあちこちに起こるしびれは、通常は多発性神経炎や変形性頚椎症、手根管症候群、三叉神経痛などが原因のことが多い。もちろん、これらの疾患も治療の必要がありますが、中には一刻も早く病院に行くべき病気が隠れていることがあります」

●左の肩から上腕部にかけて、重いしびれがある
「狭心症か心筋梗塞の関連痛の可能性があります。60代の男性に多く見られます」
 関連痛とは、内臓疾患が原因で、体の別の場所の表面に症状が表れるもの。心筋梗塞の人の約半数に、このしびれが起きるといわれている。手遅れにならない前に救急車を呼ぶべきだ。

●左右どちらかの手のひらと、同じ方の口の端が同時にしびれる
「軽い脳梗塞が起きている可能性があります。手のひらや口の神経が通る脳の視床に梗塞が起きると、このような症状になります」
 ろれつが回らなくなったりすることもある。数日以内に本格的な脳梗塞を起こす恐れがあるので、一刻も早く病院に行って精密検査を受け、適切な治療を受けるべき。

●左右どちらかの指先のしびれが、ゆっくりとひじから上に移動してくる
「ジーンというしびれが移動する症状が、徐々に頻繁に起こるようになるなら、脳腫瘍の疑いがあります。ひどくなると、てんかんが起こることもあります」
 外科手術、放射線治療などを施す必要がある。

●歩いていると、足がしびれて歩けなくなる。しばらく休むと再び歩ける
「閉塞性動脈硬化症の症状です。足の血管の動脈硬化が進み、血流が悪くなることで起こります。60〜70代の男性に多く見られます」
 血行が悪くなるせいで、普通にしていても足先がしびれたり冷えたりすることもある。放置すると足先の壊死(えし)を起こしたり、虚血性心疾患などの合併症を起こしかねない。手術、投薬などの治療が必要だ。

●手首から先、両足の足首から先がしびれる
「糖尿病の可能性が疑われます。手袋や靴下をはく場所がしびれることから、“手袋靴下型”といわれ、左右対称に表れるのが特徴です」
 もちろん、糖尿病の治療が必要になる。

●突然、左右どちらかの上腕内側に、えぐるようなしびれや痛みを感じる
「肺がんの恐れがあります。肺の上部に広がったがん細胞が腕に向かう神経を刺激して、しびれとなって表れるのです。50代以上のヘビースモーカーで、最近せきが出る人なら、その確率はさらに高まります」
 もちろん、精密検査してがんが見つかれば、手術などの治療が必要だ。
 以上が“怖いしびれ”の主なものだが、注意すべきことがある。
「しびれを訴える人は結構多いのですが、最初に整形外科に行ってしまい、原因がわからずに“心因性ですね”などと診断されてしまうことがあります。最初に神経内科を訪れてください」

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