腹囲85センチ未満でもヤバイ

メタボリック症候群の前提基準に疑義あり

 酒場や職場で話題になっている「メタボリック(内臓脂肪)症候群」。“腹囲が男性85センチ以上、女性90センチ以上”という診断の前提基準をめぐり、「オレは84センチだからセーフ」「1センチオーバーでもだめか」なんて一喜一憂している。
 ところが、この「85センチ」に、医療関係者から“疑義アリ”の声が上がっているのだ。本当に85センチより上だと「必ず危険」で、未満なら「必ず安心」なのか?
「世界のメタボリック症候群の腹囲基準をみると、米国が男性103センチ/女性89センチ、ヨーロッパは94センチ/80センチ、中国・南アジアが90センチ/80センチ。日本の基準は他国より男性で5〜18センチ厳しく、女性は最大10センチも甘い。女性の基準値が男性を上回るのも日本だけで、国際糖尿病学会も日本の基準に疑問を呈しているほどです」
 と言うのは、東海大医学部の大櫛陽一教授(基礎医学系)だ。
 この日本の腹囲基準は、CTで腹部を輪切りにした画像で、内臓脂肪の面積が100平方センチを超えるかどうかで算出されたものだが、「100平方センチを超えると動脈硬化性心血管疾患のリスクが高まることに関して、大人数を調査したデータはありません」(日大医学部総合健診センター・高橋敦彦医長)というのである。
「100平方センチの算出方法も、サンプル数が少ないうえ、統計処理に問題があります。そもそも腹囲85センチ前後は統計上、最も死亡率が低い層。それを基準値にするのは全くおかしな話です」(大櫛教授)
 確かに、身長の高さやもともとの体格を全く無視して、一緒くたに「85センチ以上は危ない」というのは乱暴な話だ。

 では、内臓脂肪のたまり具合はどのように判断すればいいのか?
「腹囲のほかに体重の増え方にも要注意です。中年になって急に太ったら、腹囲85センチ未満でも発病リスクは高いとみるべき。20歳の時より10キロ以上の増加には注意が必要です」(高橋医長)
 また、腹囲が同じように太くても、内臓脂肪型肥満の方が皮下脂肪型肥満よりリスクは高い。
 腹囲85センチ以上で、どちらの肥満かを調べるのに手っ取り早いのは、腹に力を入れてへこませ、腹囲が通常より何センチ細くなるか測る方法だ。10センチ以上細ければ皮下脂肪型、10センチ未満なら内臓脂肪型といえる。
 また、肥満度が高い人なら以下の目安がある。
(1)腹部の真ん中とわき腹の2カ所をつまみ、厚さを合計する。腹囲をその合計で割った値が17以上なら、内臓脂肪型肥満の可能性大。
(2)あおむけになり、軽くヒザを立てて、両手でヘソ回りの肉をつかむ。肉ごと厚くつかめたら皮下脂肪型、皮膚だけなら内臓脂肪型。

top>データベース7>