夏の海外旅行 この感染症に気をつけろ
人気の国・地域別
この夏、海外旅行に出かける人は、昨年より5%増の251万人(JTB調べ)。夏の楽しい思い出づくりもいいが、怖いのは、海外で感染症にかかって帰国してしまうことだ。日本人が多く出かける地域では、一体どんな病気のリスクが高くて、防ぐにはどんな対策が必要なのか。地域別に見ていこう。
●東南アジア
ビーチリゾートとして人気のタイやマレーシア、バリなどは、日本人旅行客が多い地域の中で最も感染症の危険が高い。中でもここ数年流行中なのがデング熱だ。
「40度近い高熱が数日続き、悪化すると肌に紅斑が現れたり、神経障害が起き、死に至ることもあります。ウイルスを媒介する蚊は水たまりなどでも発生するため、都市部で感染しやすいのが特徴です」(国立国際医療センター渡航者健康管理室・金川修造医長)
逆に、水のきれいな田舎で多いのがマラリア。
「マラリアには4種類ありますが、中でも怖いのは熱帯熱マラリア。やはり高熱が出て、致死率も高い。アウトドア派は要注意です」(東京検疫所検疫衛生課)
ともに年間100人近い感染帰国者がいるが、これは報告者数。実数はもっと多いと思われる。コレラ、赤痢、腸チフス、A型肝炎なども多い。
●南アジア・インド洋
インドやパキスタンで怖いのは、コレラと腸チフス。ともに不衛生な水や食品から感染し、コレラは激しい嘔吐や下痢、腸チフスは高熱が出る。
「モルディブやセーシェルでは、昨年からチクングンヤ熱が流行しています。蚊が媒介となり、高熱や頭痛、関節の痛みが特徴。日本人の感染者はまだいませんが、注意が必要です」(金川医長)
●韓国・中国
A型・B型両肝炎に要注意。A型は発熱や嘔吐が見られ不衛生な水や食物が原因。B型は肝臓の働きが悪くなり、肝硬変などに進む恐れがある。主なルートは性感染だ。
鳥インフルエンザが騒がれたが、まだ日本人感染者はなく、鳥の死骸に触れたりしなければ、そう心配はないという。
●ハワイ・グアム・サイパン
感染症は少ないが、ハワイでは2年前にレプトスピラ症が流行、日本人感染者も出ている。
「発熱や倦怠感、筋肉痛が症状。汚染された水に入ると感染するので、水遊びの時は注意してください」(金川医長)
●アメリカ本土
「3、4年前から西ナイル熱が流行しています。蚊が媒介し、昨年日本人で初めて感染帰国者が確認されました」(検疫衛生課)
多くの人は症状が出ないが、数人に1人は高熱や頭痛が出て、高齢者は死に至ることもある。
●ヨーロッパ
「東欧で森林を歩くと、ダニにかまれてダニ媒介性脳炎を発症することがあります。頭痛や発熱、悪化すると意識障害などの脳炎症状を起こします」(金川医長)
●対策
「蚊が媒介の病気は、とにかく蚊に刺されないこと。長袖を着用し、防虫スプレーを忘れずに。日本の防虫剤は効果が弱いので、頻繁にかけてください。水で感染する病気は、生水や氷、皮をむいた果物に注意するほか、くみ置き水で皿を洗うような不衛生な屋台での食事には気をつけてください」(金川医長)
それでも心配なら、出国前に予防接種を受けるといい。全国の検疫所や東京と横浜の検疫衛生協会診療所、一部病院で受けられる。
自費診療で、検疫所なら費用は330〜8800円だ。
「効き目を確実にするには、2〜4週間あけて2回打ってください」(検疫衛生課)
デング熱やマラリアにはまだワクチンがない。マラリアは予防内服薬があるが、めまいなど副作用が強いので要注意だ。
帰国時に体調が悪いと感じたら、成田など各国際空港にある健康相談室に駆け込もう。
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