食道がん・転移性肝腫瘍 2つのがんの手ごわさ

今村昌平と岡田真澄の命を奪った

●食道がん
 俳優の岡田真澄さん(享年70)の命を奪ったのは食道がんだ。昨年6月、早期がんで食道全摘手術を行ったにもかかわらず、秋にはリンパ節に転移。発病から1年足らずで亡くなった。
 食道がんは年々増えていて、年齢層では50代から急増、60代半ばでピークを迎える。しかも、以下の4つの特徴を持つ、手ごわく、厄介ながんだ。
 順天堂大学順天堂医院の鶴丸昌彦教授(食道・胃外科)に聞いた。

《発見しにくい》
「一般健診のX線検査では、バリウムがすぐに胃に流れてしまうので、小さながん細胞を見つけにくいのです。しかも、早期がんでは約60%に自覚症状がありません」
《転移しやすい》
 進行度によって0期からW期に分かれるが、まだ自覚症状が表れないようなT期から、リンパ節への転移が見られる。
「転移率はT期で10〜15%。進行につれて転移率も上がり、全体では75%に転移が見られます」
 岡田さんは、早期でも粘膜下層に達していたと思われ、その場合の転移率は約50%だ。
《大手術になる》
「内視鏡で切除できる早期の0期以外は、食道の全摘出になります。のどと胃をつなぐことになるので、胸と首、腹部の3カ所にメスを入れる大手術です」
 しかも、食道は心臓や大動脈といった重要な臓器と隣接しているため、リスクが高い。
 消化器外科の中で最も難しいといわれ、手術死亡率は2%というデータもある。
《生存率が低い》
 以前は20〜30%だった5年生存率は、治療技術の向上で40〜50%まで上がってきた。それでも、がんの中では低い方だ。
「転移が見られない段階なら5年生存率は70〜80%。転移の個数が増えるに従い、U期で約60%、V期で約40%、W期で20%以下と下がります」
 発生要因としては、「飲酒」と「喫煙」との相関が特徴的だ。飲酒も喫煙もゼロの人を1とすると、「毎日20本以上喫煙」は5、「毎日1合半以上飲酒」が12なのに対し、「毎日1合半以上飲酒&毎日20本以上喫煙」では33と、発生リスクが跳ね上がる。
「特にアルコールが弱いのに、ムリしてたくさん飲む人が危ないです」

●転移性肝腫瘍
 転移性肝腫瘍で亡くなった今村昌平監督(享年79)は、昨年結腸がんの手術に成功したが、3カ月後に転移性肝腫瘍が見つかった。すでに手の施しようがない状態だったという。聞きなれない「転移性肝腫瘍」は、どれくらい手ごわいのか。専門家に聞いた。
《どういう病気?》
「ほかの臓器のがんが肝臓に転移して腫瘍をつくったものです。“○○がんの肝転移”とも言いますが、普通は“転移性肝腫瘍”とか“転移性肝がん”と呼びます」(平塚胃腸病院・平塚秀雄理事長)

《どこからの転移が多い?》
「消化器系のがんからの転移が多い。結腸がんを含む大腸がんからの転移はよく見られます」(平塚理事長)
 大腸がんから肝臓への転移確率は20〜30%というデータもある。
《治りにくい?》
「原発部位によって異なります。大腸がんが原発の場合で、転移性肝腫瘍の数が2、3個なら、手術によって取り除ける場合もあります」(順天堂大学練馬病院消化器内科・榎本信行講師)
 つまり、治りやすい。ただし、今村監督のように手術後に転移が見つかった場合は違う。榎本講師が言う。
「手術の影響で、転移したがんが速いスピードで増殖してしまうことがあります。1〜2カ月で肝臓全体に広がってしまい、見つかったときは手遅れだった、ということもあるのです」
《大酒飲みなど肝臓が弱っている人はヤバイ?》
「一般的に因果関係はありません」(榎本講師)
《糖尿病を患っていると転移しやすい?》
 今村監督は長年、糖尿病を患っていたが……。
「これも一般的に因果関係はありません」(榎本講師)
《見つかりにくい?》
「がん患者は、再発の有無を確認するために治療後も定期的に検査をします。しかし、再発がんが大きくなるスピードが速すぎて、見つかったときには手遅れのこともあります」(榎本講師)
 転移性肝腫瘍は自覚症状はほとんどないという。
《肝臓がんとどちらが手ごわい?》
「別の疾患なので直接比較はできませんが、肝臓がんは肝硬変を伴っている場合も多く、再発も繰り返すため、治療は困難な場合があります。転移性の場合は、原発巣の状態、転移巣の状態により、予後は異なります」(榎本講師)

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