高血圧、糖尿病は睡眠障害でも悪化する

睡眠時無呼吸症候群ならなおヤバい

 高血圧と糖尿病は予備軍を含めると合計4000万人を超える。この2つの代表的な生活習慣病が、食生活と運動習慣に大きな影響を受けることはよく知られているが、実は、不眠症や中途覚醒などの「睡眠障害」によっても重大な影響を受け、症状悪化の原因になるというのだ。東京慈恵医大精神医学講座の山寺亘講師に聞いた。

 まずは睡眠と高血圧の関係だ。
「睡眠時は、眠りの浅いレム睡眠と眠りの深いノンレム睡眠が繰り返されます。ノンレム睡眠時は副交感神経が優位になって、血圧や心拍数、脈拍数が下がり、交感神経が優位のレム睡眠時は、この逆。睡眠と自律神経系とは密接にリンクしているため、睡眠障害でそのバランスが崩れると、心臓をはじめとする循環器系疾患を発症しやすい。循環器系疾患である高血圧は、睡眠障害によって悪化するのです」
 米コロンビア大の研究員が行った10年にわたる追跡調査によると、睡眠7〜8時間の人の高血圧発症率は12%だったが、5時間以下の人は2倍の24%に上るという。
 睡眠時に4、5回は目が覚めるSさん(52歳)は降圧剤で血圧を下げている。早朝、胸のつかえで目が覚め、内科を受診したのをキッカケに携帯用自動血圧計で24時間の血圧値を調べたら、夜間血圧が何と175/110に上がっていた。
「日中の血圧が正常値だからといって、夜間血圧を見過ごしていいはずがありません。睡眠障害による夜間血圧の上昇を引きずって、起床後の血圧がさらに上昇する恐れがあります。高血圧で睡眠障害の人は、明け方の心筋梗塞や脳梗塞などに要注意です」

 意外かもしれないが、糖尿病も睡眠と密接な関係がある。
 糖尿病性神経障害を発症しているTさん(37歳)は、手足の痛みやしびれを強く感じるようになり不眠症を発症。最後は抑うつ状態で入院した。大牟田市立総合病院内分泌代謝科の小路眞護診療部長の研究報告によると、睡眠改善薬を投与した結果、基準値の2倍以上だったHbA1cが下がり始め、インスリン投与量が減ったという。
 Tさんのケースは、不眠治療が糖尿病を改善させたわけだが、逆にいうと睡眠障害が血糖コントロールを不安定にし、糖尿病を悪化させていたわけだ。
「糖尿病患者はよく水を飲むため尿意覚醒が強く、糖尿病そのものに不眠症を誘発するメカニズムがあります。この点を踏まえて小路部長の報告を考慮すると、糖尿病と睡眠障害の相関関係は強く、不眠によって“スパイラル的”に糖尿病が悪化しかねません」

 睡眠と高血圧や糖尿病との関係で見逃せないのが、睡眠時無呼吸症候群(SAS)だ。
「睡眠1時間の間に10秒以上の呼吸停止が5回以上ある状態が、SASです。高血圧や糖尿病の人がSASを併発していると、SASを治療しない限り、いくら生活習慣病の治療をしても効果が得られないのです」

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