甲田光雄氏
「少食の力」(春秋社 1700円)
断食療法、西式健康法などの自然医学をベースに数々の難治性疾患を治癒に導き、現代医学の常識を根底からゆさぶってきた著者が、病気治しにとどまらない、“これからの生き方”としての少食を熱く説いた書だ。
「少食でたいていの病気は治る。これは紛れもない事実で、甲田医院の臨床データには全身性エリテマトーデス、重症筋無力症、多発性硬化症、がんといった現代医学で難治性とされる疾患の治癒例がたくさんあります。また、今は適切な食事制限によって寿命が延び、免疫力が高まり、老齢になっても脳の働きが保たれるといった医学的データも次々に発表されています」
著者は長年、数多くの実績を挙げて臨床データを公表してきた“少食療法”の権威。
本書では、やはり難治性とされるリウマチ患者10人の治癒例を報告している。難病だけに、厳しい少食メニューに根気強く取り組む必要があるが、それでも“リウマチが治る”という事実は、患者に大きな希望を与えるものだろう。
「このように少食によって病気は治り、誰でも健やかに老いることができます。ただし、この本は病気治しや健康法としての少食を紹介するためだけに書いたものではありません。それ以上に、このままでは日本はつぶれてしまうという、大きな危機感をもって書いた警告の書でもあるのです」
今の世の中がこんなふうに荒廃してしまったのは、食を天の恵みとして大切にいただくことを忘れ、“いのち”より経済を優先してきたツケではないか、と著者は言う。
「それに、飽食・グルメの世は決して長く続きません。10年もしたら、世界規模の食糧危機の時代が来る。そのとき、自給率が40%に満たない日本はどうなるのでしょう。少食は、その処方箋でもあるのです。みんなが1日1700キロカロリーの少食にすれば健康にもいいし、世界の人口が100億人に増えても大丈夫。この本は“日本がまず、そのモデル国家となってほしい”という願いをこめて書いた本なのです」
〈こうだ・みつお〉 1924年東大阪市生まれ。大阪大学医学部卒。日本綜合医学会会長。医学博士。「断食・少食健康法」「断食療法50年で見えてきたもの」ほか著書多数。
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