ここを知りたい「若年性アルツハイマー」

映画・小説で「明日の記憶」が大ヒット

 渡辺謙主演の映画「明日の記憶」が大ヒット中だ。50歳を前に、若年性アルツハイマー病を発症したサラリーマンを描いたもので、一昨年に発売された同タイトルの原作も、やはり大ヒットした。そのおかげで、今、若年性アルツハイマー病がガ然クローズアップされている。そこで、この病気の治療経験の多い順天堂東京江東高齢者医療センター・メンタルクリニックの木村通宏医師に、ぜひ知っておきたいことを聞いた。

●一般的なアルツハイマー病とはどこが違う?
 進行がやや速い傾向はありますが、病状や治療法などは大差ありません。アルツハイマー病は症状に気付くのが65歳より前か後かで早発性と遅発性に分けられ、早発性の中でも特に若い40代や50代前半の場合を「若年性――」と呼んでいます。

●30代でも発症するか?
 30代での発症例はほとんどありません。発症が見られるのは40代以降で私が診た最も若い方は42歳でした。年齢とともに発病の頻度が上がるので「若年性――」と呼ばれる中で多いのは50代です。

●治るのか?
 現段階では「アリセプト」という薬の服用で、症状の進行を遅らせるしか方法はありません。つまり完全には治療することはできない。しかし現在もメマンチンやガランタミンなど新しい治療薬が検討されており、今後の進歩を期待しているところです。ただ、認知機能自体の低下よりも、患者本人や家族を苦しめるうつ症状や意識障害などは、薬で改善できます。

●どういうふうに症状が進むのか?
 たいていは「覚えられない」「思い出せない」「道に迷う」「左右が分からない」などから始まり、5〜10年ほどで日常生活を自力で送ることが困難になります。最終的には脳全体が障害され、体の機能が正常に働かなくなる。食事や、重症の場合は唾液(だえき)もうまく飲み込めずに肺に入り、肺炎を起こして亡くなるケースが多いです。

●どの科を受診すべき?
 アルツハイマーなどの認知症とうつ病の両方を診られる総合病院の精神科を受診した方がいいです。普段から認知症を診察している医師ならたいてい診断がつきますが、そうでない場合、うつ病と間違えられるケースも少なくありません。

●健康保険適用か?
 適用されます。さらに、65歳以上が対象の介護保険も「若年性――」と診断され、いくつかの条件に該当すれば、40歳〜65歳未満も適用になります。

●告知されるのか?
 私は認知症の重症度、ご本人の置かれている状態やご家族の希望を伺って検討します。告知の有無、そして告知の内容に関しては、医師によっても異なると思います。

●親がアルツハイマーだったら、なりやすい?
「若年性――」の患者さんには、直系にアルツハイマーの方がいるケースが少なくありません。確かに「なりやすさ」は遺伝します。しかし、それは「家系にがんが多いから自分もなりやすい」と同じで、「親がアルツハイマーだったから自分もなる」ということではありません。

●発症リスク高い人は?
 特にありません。だれでも発症する可能性はあります。あえて挙げるなら、前出の「直系にアルツハイマー病の人がいる」、そして「頭部外傷の既往症がある」「ストレスをモロに感じるタイプ」などです。

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