手や腕のトラブルは病気だ

パソコンで手指酷使が原因

 人事異動も終わり新年度が始まった。どのセクションに異動しても欠かせないのがパソコン操作。そして最近目立つのが、パソコンによる手指の酷使が原因の手や腕のトラブルだ。どんなものがあるのか。対策はどうすればいいのか。「おくつ整形外科クリニック」の奥津一郎院長に聞いた。

「パソコンを使っている人で、手の痛みやしびれを訴えて受診される方が増えています。最近は中高年だけでなく、20、30代の人も目立ちます。毎日のパソコン操作は、腱滑膜、腱、筋肉、骨、関節、靭帯などに、繰り返し小さな外傷を与え続けているようなものなのです」
 具体的にどんな病気があるのか。
 最も多いのがバネ指だ。
 バネ指は指の付け根の腱鞘に腱滑膜炎(腱鞘炎)が起こることにより発症する。手指の屈伸のたびに、腱鞘に炎症を起こした腱のはれた部分がひっかかり、指をスムーズに曲げたり伸ばしたりできなくなり、ピストルやライフルの引き金を引くようなカクカクした指の動きになる病気だ。
「対策は、なるべく手指を使わないようにした上で、入浴時にお湯の中で手指をゆっくり開いたり握ったりすること。整形外科では、消炎鎮痛薬の内服や張り薬、ステロイドの局所注射などの保存療法で様子を見ます。それでも良くならない時は、腱鞘を切開する手術をすればバネ現象は100%治癒します」

 次に多いのが手根管症候群だ。手根管とは手のひらの付け根部分にある長さ約3センチのトンネル状の管で、この中を走る正中神経が圧迫されるのが手根管症候群だ。
「親指から薬指にかけてビリビリするしびれや痛みが表れます。特に夜間は強くて眠れないこともあります。さらに進行すると、手のひらの親指側の筋肉が委縮してふくらみがなくなり、親指と他の指を使って物をつかむことができなくなります」
 対策は、パソコンを使う時はパソコン用の台に手を置いて打つこと。
「手首をそらしすぎたり曲げすぎたりしないためです。それでも良くならない時は整形外科の受診を。治療はまず消炎鎮痛薬の内服や張り薬、ステロイド薬の手根管内注射で様子を見ます。3カ月たっても良くならないときは手術を検討します」
 手首の親指側が痛むドゥ・ケルバン腱鞘炎も要注意だ。
「パソコンを操作する時だけでなく、コーヒーをついだりフライパンを握ったりする時にも痛みます」
 バネ指と同じ保存療法を行っても良くならない場合は、腱鞘を切開する手術が必要だ。
 指の先端の関節が痛み、ひどくなると指の先が変形して曲がってくる変形性指関節症もある。
「消炎鎮痛薬の服用などの保存療法が主な治療になります。指の変形のために物をつかむなどの動作が障害された場合は、関節固定術を検討することもあります」
 上腕骨外顆炎、いわゆるテニス肘も、パソコン操作を繰り返す人や筆圧が高い人に起こりやすい。
「指を伸ばす筋肉の付着部が炎症を起こして、肘の外側の骨付近が痛くなるもの。指を伸ばす筋肉を強化するために、指を握って手首をそらせる運動を。1、2、3、4、5と数えて休み、また同じように繰り返す。朝、昼、晩に分けて、1日60回やってみてください。痛みを感じなくなってきます」
 あなたの手のトラブルはどれに該当するのか。原因を知って早めに手を打とう。

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