メタボリック症候群から逃げ切る知識と知恵
40〜74歳男性は2人に1人がこれだというが
40〜74歳男性は2人に1人、全体で2700万人が「メタボリック症候群」の有病者か予備軍――。そんな衝撃的な統計が厚労省から発表された。「男性なら腹囲が85センチ以上」の内臓脂肪肥満で、かつ(1)高脂血症(2)高血圧(3)高血糖の3つの生活習慣病のうち、2つ以上該当すれば“有病者”、1つなら“予備軍”とされる。
メタボリック症候群が怖いのは、各検査値が深刻でなくても、これらが重なれば心筋梗塞や脳卒中などに進行する危険性が高いことだ。さて、アナタはメタボリック症候群についてどれだけ知っていますか? 最低限必要な知識は身につけておかないと、ヤバイよ。
★Q そもそも「内臓脂肪」って何?
☆A「皮膚の下に蓄積される皮下脂肪に対し、主に小腸を守る腸間膜の周囲に付着した脂肪が内臓脂肪。合成が早く、ちょっとした生活習慣の乱れで、みるみるたまっていきます」(東京慈恵会医大健康医学センター・和田高士センター長)
厳密には、CTで腹部を輪切りにした画像で、内臓脂肪面積が100平方センチ以上を「内臓脂肪肥満」とするが、手軽に測れる腹囲が「85センチ以上」で判断するのが一般的だ。
★Q なぜ内臓脂肪肥満がメタボリック症候群の診断の前提なのか?
☆A「蓄積された内臓脂肪細胞からは、レジスチンやTNF―αなど、さまざまな生理活性物質が分泌されます。これらは体内で血圧を上げたり、インスリン抵抗性を高めて血糖値を上げるなどの形で作用し、生活習慣病を引き起こす原因になるのです」(日大医学部総合健診センター・高橋敦彦医長)
皮下脂肪に比べ、内臓脂肪は血管が集中する場所に蓄積されるので、生理活性物質の影響がすぐに表れる。内臓脂肪の蓄積自体が、生活習慣病にとって“悪”なのだ。
★Q 該当する生活習慣病の数が増えると、重大病のリスクはどのくらい高まるのか?
☆A 01年の厚労省調査によると、心筋梗塞など冠動脈疾患の発症リスクは、肥満、高血圧、高血糖、高中性脂肪血症の4つの危険因子が0の人に比べ、1つの人はざっと5倍、2つは10倍、そして3つ、4つの人は何と31倍になる。危険因子が多ければ多いほど、重大病リスクは加速度的に上がるのだ。
「また、内臓脂肪肥満の人は、高血圧、高脂血症、糖尿病の順に発症しやすい傾向があります。糖尿病が出たら、かなり高リスクだと思った方がいい」(高橋敦彦氏)
★Q 腹囲や血圧、血糖値などの各検査値が、それぞれ少しでも基準値より下なら大丈夫?
☆A「ひとつひとつの危険因子は治療の必要がないレベルでも、2つ3つと重なれば相乗効果でリスクは急速に高まります」(高橋敦彦氏)
一匹一匹は弱くとも、集団で動物を襲うピラニアのようなもの。これがメタボリック症候群の怖いところだ。
★Q 腹囲が85センチ未満なら、他の検査値が高くても安心か?
☆A「やせ形なのに腹囲以外の検査値が高い人は、遺伝による高血圧や糖尿病など、内臓脂肪とは別の原因が考えられます。より詳しい検査を受けてください」(和田高士氏)
「高血圧の約4割、糖尿病の約6割は内臓脂肪肥満が原因、残りは別に原因があると考えられます」(高橋敦彦氏)
★Q 内臓脂肪を減らすにはどうすればいい?
☆A「内臓脂肪は付きやすい分、落ちやすい。摂取カロリーを減らす、脂肪や糖分を少なめにして野菜や食物繊維をなるべく多く食べる、有酸素運動を毎日行う、などの生活改善で内臓脂肪は確実に減ります。同時に検査値も下がっていくでしょう」(高橋敦彦氏)
たとえば、血圧なら5前後は低下するという。もちろん、減塩などと組み合わせれば、相乗効果が期待できる。
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