検査数値 本当の正常値は5歳単位で違う

人間ドックの“判定”をうのみにしちゃダメ

 誰もが気にする血糖値やγ―GTP、コレステロールなどの検査数値。だが、正常値や要治療の異常値が、若い人も中高年も同じであることに違和感を覚えないか!?
「年を取れば体力が落ちるように、検査値の基準範囲も加齢とともに変化するもの。5歳ごとの年齢別基準範囲から、あなたの“本当の正常値”を判断すべきです」と言うのは、「検査値と病気 間違いだらけの診断基準」(太田出版)の著者で、東海大医学部の大櫛陽一教授(基礎医学系)だ。目からウロコの提言を詳しく聞いた。

「たとえば、体力測定で用いられる垂直跳びの平均値は、20歳の約60センチから年を取るとともに低下し、60歳では約35センチです。それは加齢による体力低下で仕方がないこと。検査値も同様で、年とともに人の活動機能は変化するのだから、年齢別に“正常値”が違って当たり前です。なのに、日本の医療はそうした年齢差を無視した一律の基準をもとに、高齢者に薬を与えて無理やり高くジャンプさせるようなことをやってきたのです」
 検査の基準値は年齢によって違ってくるのであり、それをもとに自分の数値が正常か否かを判断する必要がある。20代も50代も同じ従来の基準値では、早期異常を見逃したり、逆に不必要な治療が行われることになる。
「欧米では、基準値は統計データに基づいて作られ、公的機関のチェックを受けて公表されます。しかし、日本では各臨床学会が独自に制定、その根拠も明らかにされず、外部チェックもない。信頼度が低いと言わざるを得ません。また、これまで年齢別検査基準がなかったのは、作成のために大量のデータが必要なことと、医療施設ごとに検査方法が違うことなどがあり、データの精度に疑問符が付いたからです。最近になって精度管理が進み、データとして使えるようになりました」
 大櫛教授が約70万人の健診データから作成した24の“5歳ごとの本当の基準値”の中から、代表的な生活習慣病について紹介しよう。これを見れば、いかに重大な病気を見逃したり、不必要な治療を受けていたかもしれないことがわかるはずだ。「上限値」以上と「下限値」以下は医師の診察が必要。「上限値〜目標範囲上」と「目標範囲下〜下限値」は、2年連続でここに入ると要生活改善で、理想は「目標範囲上〜下」だ。

●糖尿病
 従来の基準では、空腹時血糖値が110mg/dl以上で“境界型糖尿病”とみなされるが、20代と30代前半の上限値は従来基準値を下回る。また、HbA1cでは、54歳以下の上限値は従来基準値を下回る。これらの世代の、上限値と従来基準値の間に入る人の“早期異常”が見逃されている可能性が高いわけだ。
「HbA1cから40代男性の4%前後、空腹時血糖値と合わせると男性全体で推計150万人の早期糖尿病が見逃されている計算です。糖尿病は異常を早期に発見できれば、厳しい食事制限も投薬もせずに済むのです」
 逆に、空腹時血糖値で30代後半以上の世代は、厳しい基準を強いられていることになる。

●肝臓病
 脂肪肝の指標・GPTでは20代と40代後半以上、アルコール性肝炎の指標・γ―GTPでは50代前半を除く全世代で、上限値が従来基準値を下回る。
「早期異常を見逃すと、肝細胞の破壊が進んで治りが遅くなります」

●高脂血症
「不必要な治療が多い」と大櫛教授が指摘するのが高脂血症だ。
「総コレステロール値を例にとると、全世代で上限値が従来基準値(220mg/dl以上が治療対象)を上回る。従来基準値と上限値の間に入る人たちは、治療の必要がないのに高脂血症と診断され、投薬治療などを受けているのです」
 米国では、年齢や既往歴などから“低リスク”と判断された人の投薬開始基準は、270mg/dl以上だという。
「国内の追跡調査では、男女とも最も死亡率が低かったのは、従来基準値より高い220〜239の集団でした。また、179以下では死亡率が上昇していることから、逆に180以下に下げない注意が必要です」

●肥満
 BMIを見ると、従来基準値でこれ以上は肥満とみなされる25は上限値より下だ。
「異常な体重増加は別にして、中年になれば若い頃より小太りになるのは自然。やせすぎよりBMI22〜30の間の方が死亡率は低いのです。30代以上は22から26の間なら問題ありません」
 最後に大櫛氏が言う。
「ほとんどの検査数値は生活習慣の改善で正常値に戻ります。薬は救命のための最後の手段と心得るべきです」

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