腎臓をパワーアップする生活術
自覚症状がない今から始めないとヤバイ
今、“腎臓の働き低下”の人が増えているという。「人工透析には至っていないが、腎臓の働きが60%以下の慢性腎臓病の人は5人に1人」と予測する専門家もいるのだ。腎臓の働きが低下するとどうなるのか? 何とかしてそれを食い止め、さらには働きをアップできないのか?専門家に聞いた。
「腎臓は沈黙の臓器。一般的に自覚症状が出てくるのは、正常時の5〜10%くらいにまで機能が低下して老廃物の排泄スピードが著しく落ち、人工透析しか治療法はない、という状態になってからです。しかし、それまで気がつかない人が少なくありません。病院に行ったときは“進行を止めることすら難しい”というケースも珍しくないのです」
こう言うのは腎臓の専門医である虎の門病院健康管理センター・辻裕之医員だ。“人工透析しか治療法がない”といわれてもピンとこないかもしれないが、かなりの“最悪段階”だ。
「人工透析を始める人の平均は65歳前後ですが、透析を開始した人の約38%が5年以内に亡くなる、という報告があるのです。腎機能低下の人は動脈硬化の進行が早く、脳梗塞などの脳血管障害、心筋梗塞などの心疾患を起こしやすくなりますから、突然死のリスクも高くなります」
10年、20年とかけて腎臓の働きは低下していく。つまり、65歳で人工透析を始める人が平均ということは、45歳、55歳が“スタート地点”。最悪段階を回避するには、今すぐ対策を講じることだ。
絶対にやらなくてはならないのが、腎機能の状態を示す血中クレアチニン値、尿タンパクの値に注意し、1年に1回くらいは人間ドックや健診で“腎臓状態”をチェックし知っておくこと。少しでも数値に“異常”が見られたら、自覚症状がなくても専門医を受診する。
日常的には、食生活の注意だ。飯塚律子ヘルスフーズ研究所・飯塚律子所長が言う。
「腎臓を守り、働きを高めるポイントは3つです。まず、塩分を取り過ぎない。特にサラリーマンの方に注意してほしいのは調味料やソース類です」
焼き魚や漬物にしょうゆをかける、ソースをたっぷりつけてトンカツなどを食べる、サラダにドレッシングをたくさんかける。これらはどれも駄目だ。
「しょうゆ、ソース、ドレッシングなどの量を減らすだけでも、塩分摂取量をかなり減らせます。汁物を取り過ぎないなども大切ですが、調味料・ソース類対策から始めると減塩に成功しやすい」
第2のポイントは、カリウムと食物繊維の摂取量を増やすことだ。
「カリウムは塩分、食物繊維は老廃物の排泄を高めます。どちらも、果物、野菜、豆類、キノコ類、海藻類に多い。トマトやトマトジュースなら簡単に取れるのでおすすめ。バナナ、オレンジ、グレープフルーツなどの果物を朝食に取る、里芋やカボチャなど野菜の煮物、ワカメの酢の物、キノコ炒めなどをお酒のつまみに食べる、などもいいです」
第3のポイントは、タンパク質の過剰摂取を避けることだ。焼き肉、天ぷら、刺し身など、いわゆる“ごちそう”にタンパク質が多いので、これらが続かないようにする。
「タンパク質の材料であるアミノ酸の飲料やサプリを取り過ぎることにも注意してください」
前出の辻氏が言う。
「糖尿病、高血圧、高脂血症などの人は、腎臓の働きが低下しやすい食生活に気をつけるとともに、血圧の変化にも注意を。通常の基準値(上140・下90未満)より、それぞれ10ほど低く保つことを心掛けてください。さらに糖尿病の人は、定期的に病院で腎臓に関する検査も受けるようにしてください」
ほっておくとヤバイ。
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