1日の必要量は豆腐で半丁、納豆なら1パック
大豆に含まれている大豆特有のフラボノイド(抗酸化作用の強い植物成分)はイソフラボンと呼ばれている。
大豆食品を食べるとイソフラボンは胃からは吸収されずに腸内細菌によって植物ホルモンに転換されて、腸から吸収される。
大豆食品をよく食べてきた民族の場合は、その転換がスムーズに行われるので、食べると血液中のイソフラボン値がすぐに上がることが確認できるが、大豆食品を食べる習慣のなかった民族はあまり上がらない。
フィンランドの研究者によると、フィンランド人男性のイソフラボンの血中値は日本人男性の100分の1である。
吸収されたイソフラボンのホルモンとしての活性は弱く、薬品のエストラゲン剤の数百分の1から1万分の1でしかないが、それはマイナスではなく実は大きなプラスである。薬品のような副作用がなく、前立腺ガンや乳ガンなどのホルモン依存性のガンのリスクを下げるのだ。
ではどのくらい大豆食品を食べていればいいのかというと、かつて長寿世界一といわれた沖縄県民が伝統的に食べていた量と考えられている。沖縄県民が食べていた大豆食品の量は世界一で、乳ガン死、前立腺ガン死はゼロに近かったからである。
その量をイソフラボンの量にすると1日70〜90ミリグラム。大豆食品に含まれている量は次のとおりである。
豆腐半丁 75ミリグラム 納豆1パック65ミリグラム ほぼこれくらい食べていれば足りるわけで、これからは枝豆のシーズンになるが、ビールのつまみに枝豆を食べればそれからもイソフラボンが摂れることになる。
イソフラボンはガンの発生を抑えるのではなく成長を抑える。
検死のデータを比較した研究では、アメリカ人男性と日本人男性にはほぼ同率で前立腺ガンが認められている。しかし、日本人男性の場合は、ガンが小さいままで臨床的にガンと診断されるレベルまで成長していないケースが多いのだ。
大豆はガンを抑えるだけでなくコレステロールも下げる。ケンタッキー大の研究者が豆腐90〜120グラム(約半丁)を毎日被験者に食べてもらった38回の研究では、高かった血中コレステロール値と中性脂肪値が顕著に下がっている。
それだけではなく、悪玉のLDLコレステロールの酸化も防いでいる。酸化LDLは動脈硬化の原因になるのだから、循環系の健康のためにも大豆を食べたい。
●丸元淑生(まるもと・よしお) 1934年、大分県生まれ。東京大学文学部仏文科卒。作家、栄養学ジャーナリスト、料理研究家。
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