安保徹氏

「長生き免疫学」(現代書林 1500円)

 世界的な免疫学者である安保徹氏が、「免疫システムは加齢によって絶妙に切り替わっていく」という新しい理論を打ち出した本だ。「中高年になっても気力・体力が充実し、元気に楽しく生き抜くための具体策」も満載の“希望の書”だ。安保氏を直撃――。

「これまで人間は年をとれば体力を失い、免疫力も下がり、単に衰えていくだけと考えられてきましたが、実際は盛り返してくる部分もある。年をとると免疫機能が自然と“外来抗原向け”から“異常自己監視型”に切り替わるという、素晴らしい仕組みが備わっていることがわかったのです。こんな画期的な研究成果を発表したのに、世の中の反応が鈍い。先に行きすぎたんですね(笑い)」
 簡単にいうと外敵と戦う免疫力は低下するが、内へのチェックと対応に当たる免疫力が強まる仕組みに切り替わっていくということ。これは、年をとるにつれ体内に異常細胞が増えていく自然の摂理に応じた“生命保持作用”だ。この素晴らしい免疫機能により、誰もが本来100歳まで健康に生きられることがわかったという。
「ただし、それには病気にならないような生活を送り、病気になったとしても誤った現代医療の治療を受けなければ、という条件がつきます。病気の2大元凶はストレスと低体温ですから、無理を重ねる交感神経優位型にも、ラクをしすぎる副交感神経優位型にも偏らない生活を送ることですね」
 しかし、無理もラクも生き方に関わる問題で、そう簡単に人は変わらない。それを踏まえて、著者は本書で初めて心の持ち方にも言及。がんや生活習慣病を自分で治すための食事、運動法、入浴法、呼吸法、爪もみ療法に加え、長生き実践法として「とらわれない」「五感をフル活用して感性を鍛える」「傲慢な生き方をしない」「“ありがとう”は魔法の言葉」など、日常の心構えも説く。
「多くの人は無意識の思い込み=モノサシによって生き、自分が大病をするまでそれを変えようとしません。できれば健康なうちに本書を読んでほしいですね(笑い)」

〈あぼ・とおる〉 1947年生まれ。東北大学医学部卒。現在は新潟大学大学院医歯学総合研究科教授。「免疫革命」「こうすれば病気は治る」など著書多数。

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