うつ病で立ち往生しないための必修Q&A

「知らない」「分からない」では済まない

 うつ病の発症者は増える一方だ。それだけに「対処法なんて分からない」とは言っていられない。家族や同僚、あるいは自分がうつ病になったことを考えて、しっかりとした知識を持つ必要がある。
 そこで、役に立つ「うつ病のQ&A」を東京女子医科大学東医療センター・心の医療科の山田和男講師にお願いした。

(Q)うつ病を「心の風邪」と言うが、どれくらいで治る?
(A)抗うつ薬SSRIを適切に用いると、数週間から数カ月ほどで抑うつ状態や気力の低下、慢性的な疲労感、不眠などのうつ病の諸症状が改善されます。しかし“治る”ためには、しばらくは薬を飲み続ける必要があります。完全に治ったと思って薬の服用を全くやめてしまうと、30〜80%の割合で再発するという報告があります。すっかりよくなったと思っても、少なくとも6カ月間は薬をやめたり、減らしたりしないようにしましょう。

(Q)うつ病は遺伝するのか?
(A)うつ病は、性格、育った環境、現在の環境、遺伝など、いくつかの理由が絡み合って発症するといわれています。ですから、家系にうつ病患者がいたとしても、それだけでは発症しない。つまり“必ず遺伝するとは限らない”と言えます。

(Q)家族(同僚)がうつ病かも。どうやって病院に連れていけばいい?
(A)まず、家族の場合です。「具合が悪いようだから、一度、精神科を受診しては?」とさりげなく勧めます。精神科に抵抗があるようなら、とりあえず内科の受診を勧めます。どうしても嫌がるようでしたら、家族が代わりに病院に行き、医師に対処法を相談します。嫌がる患者を無理やり精神科に連れていくのは逆効果です。
 同僚の場合は、患者の家族に電話などで様子がおかしいことを伝えます。その上で、家族から病院に行くことを勧めてもらう。もし、患者が一人暮らしなら、前出の家族の対処法と同様に。

(Q)最初の診察は誰か付き添うべき?
(A)家族の付き添いを勧めます。うつ病の治療は家族の協力が不可欠です。病気への認識を深められるし、初診時にできる限り多くの情報を医師に伝えることができます。

(Q)会社にうつ病であることを言うべきか?
(A)うつ病の治療の基本のひとつが十分な休養です。よほど軽症なら別ですが、そうでないなら会社に言って、2〜3カ月ほど仕事を休み休養を取ることが、早期治癒につながります。

(Q)仕事はしない方がいい?
(A)電話やネットを使って、自宅で仕事を続けようとする方がいますが、それでは“十分な休養”になりません。

(Q)“休養”って何をすればいい?
(A)しばらくは家でゴロゴロが一番です。症状がかなり良くなるまでは、気分転換のための旅行や散歩も逆効果なのでやめましょう。

(Q)うつ病で休んでいた部下が復帰してきたが、どう対応すればいい?
(A)“これまで通り”が基本ですが、仕事量は少なめに。復帰直後は“慣らし運転”と思い、半休を勧めたり、さりげなくサポートするなどしてください。

(Q)うつ病から復帰した部下の仕事量を減らすために異動させるべき?
(A)病状や、上司と部下の信頼関係にもよりますが、一般的には異動は勧められません。環境の変化は、新たな心身の負担になり、うつ病が再発するケースもあるからです。

(Q)自殺のサインは?
(A)うつ病で怖いのは、自殺の可能性が非常に高いことです。回復期は特にリスクが高く、普段と違う行動が見られたら、すぐ主治医に相談すべきです。たとえば「遠くに行きたい」「生きていても仕方がない」など、死を連想させる言葉を言ったときです。

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