みぞおちの痛み 怖い病気のことが多い
狭心症や腹部大動脈瘤など
暴飲暴食をして、みぞおちが痛む急性胃炎を経験した人は多いだろう。その痛みを、たかが胃痛と侮っていると、思わぬしっぺ返しを食らうことになる。命にかかわる危険な病気が潜んでいることもあるのだ。症状別に考えられる病気と対策について、日本鋼管病院の高橋伸副院長に聞いた。
●起床直後や午前11時、午後4時など、空腹になるとみぞおちが痛み、食べると痛みが軽くなる
胃潰瘍や十二指腸潰瘍が疑われる。
「空腹時に痛むのは、濃い胃酸が直接潰瘍を刺激するから。食べると良くなるのは、胃酸が薄まり刺激が弱まるからです」 病院を受診して胃の内視鏡検査を。胃・十二指腸潰瘍との診断がつけば、制酸薬を飲めば治る。何回も繰り返す場合は、ピロリ菌の検査をして陽性であれば、ピロリ菌の除菌治療が必要だ。
●食事と関係なく、みぞおちが重苦しい。食欲がなく体重も減ってきた
「胃がんの疑いがあります。胃がんは痛まないといわれますが、胃がんの人に聞いてみると、みぞおちの症状があったという人が多いのです」
胃の内視鏡検査を。
●レストランで腹いっぱい食べて喫煙した後、寒い外へ出たら、みぞおちに重圧感を感じた
「狭心症の疑いがあります。狭心症の典型的症状は胸痛ですが、みぞおちの痛みとして感じることがあるのです」
●夕食に天ぷらをたくさん食べた。その1時間後に、みぞおちに差し込むような激痛がした
胆石発作の疑いが濃厚。
「油物をたくさんとると胆のうが収縮して胆汁をたくさん十二指腸に送ろうとします。胆のうが収縮するときに胆石が動き、胆のうの出口に引っかかって痛むのです」
すぐ病院へ。薬物治療で痛みをとることができる。
●みぞおちの下が痛くて、触るとドキドキと鼓動を感じる
腹部大動脈瘤が破裂しそうになっている可能性がある。かなり危険。
「破裂すると100%近く死亡します。至急心臓外科か腹部外科へ。腹部のCT検査で腹部大動脈瘤との診断がつけば、大動脈を人工血管に置き換える手術が必要です」
●宴会でアルコールを多飲、油物を多くとった。その後みぞおちが激しく痛み、背中も痛くなってきた
急性すい炎の疑いがある。危険な痛みだ。
「急性すい炎はすい液中の酵素がすい臓自体を消化しようとするので、痛みが起こってきます。重症の急性すい炎だと、死亡率が20〜30%にも上るので要注意。すぐ病院へ。急性すい炎とわかれば、炎症を抑える治療が必要。重症の場合は集中治療室で多臓器不全を防ぐために、人工呼吸器や人工透析を使った治療が必要になることがあります」
●時々みぞおちが痛んでいたが、ある日突然おなか全体が激しく痛み出した
胃・十二指腸潰瘍の穿孔のために汎発性腹膜炎を起こしている疑いがある。
「胃や十二指腸に穴があき、内容物がおなかの中に広がった危険な状態。すぐに救急車を呼んで病院へ。緊急手術が必要です」
●最初みぞおちが痛んでいたが、数時間から1日のうちに痛みが徐々に右下に移ってきた
急性虫垂炎の可能性がある。至急病院へ。
「放置していると右下の虫垂が破裂して腹膜炎になります。緊急手術が必要です」
みぞおちの痛みには、急を要する危険な病気が多いことを肝に銘じておこう。
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