重大病の思わぬ前兆

素早くキャッチして手を打たないと大事に至る


 放置しておくと命にかかわる重大病には、見落としやすい意外な前兆や初期症状があることがある。それを素早くキャッチして手を打てば、大事に至らずにすむことも多いのだ。どんな症状が、どんな病気の前兆となるのか。専門医に聞いた。

●片側の肩だけが凝る
 肺のてっぺんにできる肺がん(パンコースト腫瘍)の初期症状のことがある。
「脳から首や肩を通って手の先に行っている神経が出ています。肺のてっぺんにできたがんが、首や肩を通っている神経に触れると、肩の凝りや痛みとして感じるのです。せきを伴えば肺がんの疑いはさらに濃厚になります」(内田整形リウマチクリニック・内田詔爾院長)
 単なる肩凝りで片付けずに、病院を受診してCTなどでチェックを。
●急に数分間ロレツが回らなくなり、持っているはしを落とす
「脳梗塞の前兆である一過性脳虚血発作の疑いが濃厚。首の動脈から飛んだ血栓が、一時的に脳の血管を詰まらせるための症状です。症状自体は24時間以内に消えますが、その後数日から数カ月の間に、本格的な脳梗塞を起こすリスクが高いのです」(くどうちあき脳神経外科クリニック・工藤千秋院長)
 つかの間の症状だから大丈夫とタカをくくらずに、脳外科か神経内科を受診して脳や頸部のチェックを。
●信号がダブって見えたり、電柱が2本に見える
「脳腫瘍か脳動脈瘤が潜んでいる疑いがあります。脳腫瘍や脳動脈瘤が、目の真後ろにあって目を動かしている動眼神経を圧迫するので、物が二重に見えるのです」(工藤院長=前出)
 ひどい乱視になったなどと勘違いしないで、脳外科でチェックを受けよう。
●片目の前に黒くて大きい蚊がたくさん飛び始めた
「小さい点状の蚊が1個という程度なら、生理的な飛蚊症の可能性が高いが、大量の蚊が急激に“発生”するような場合は、網膜に穴があいたための強い飛蚊症の可能性が高い。網膜剥離の前兆です」(井上眼科病院・井上治郎理事長)
 できるだけ早く眼科へ。網膜剥離に発展させないためのレーザー治療が必要だ。
●みぞおちが痛む
「胃かいようか胆石かと思っていると、狭心症のことがあります。狭心症の典型的症状は胸痛ですが、放散痛といってみぞおちの痛みとして感じることがあるのです」(九段クリニック・阿部博幸理事長)
 胃や胆のうなどの消化器に問題がない場合は、循環器科に行って詳しい心電図をとってもらおう。
●連日大いびきをかく
「酒を飲んだ時や疲れた時だけでなく、常習的に大いびきをかいている場合は、睡眠時無呼吸症候群の前兆です。朝起きたときに口の渇きや頭の重さ、昼間に眠気などがあれば、その疑いはさらに濃厚。本人は気づきませんが、睡眠中呼吸が断続的に止まることがあればまさしくそうです」(東京慈恵医大病院精神神経科・山寺亘講師)
●激しい頭痛と吐き気がする
「脳動脈瘤から少し出血している可能性がある。本格的なくも膜下出血の前兆です。風邪や片頭痛などで片づけていると命取りになります」(工藤院長=前出)
 できるだけ早く脳外科に受診を。再出血を防ぐ手術が必要だ。
 ちょっとした異変に重大病の前兆が潜んでいることを肝に銘じておこう。

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