痛くない虫歯治療最前線

ほとんど歯を削らない3大治療法

 虫歯治療といえば、あのキュイーンという「ドリル音」を思い出して背筋が寒くなる歯科恐怖症の人も多いだろう。しかし最近は、ほとんど虫歯を削らない“痛みのない治療”が注目を集めている。最前線を行く3つの治療法を紹介しよう。

●オゾン治療 
「自分の歯を長く使ってもらうために、虫歯といえどもできるだけ削らないで治療する、というのが最近の治療の流れです」
 こう言うのは、オゾン治療を行っている近藤歯科(東京都目黒区)の近藤隆一院長だ。
 歯の中に虫歯のばい菌が入り込んで歯が崩壊していくのが虫歯。オゾン治療は、オゾンの強い殺菌作用によって、その虫歯のばい菌を殺す。
「従来の虫歯治療だと、感染部位の取り残しによる虫歯再発を防ぐために、健康な部分も含めて多めに削るので、麻酔をしないと痛むことが多い。しかしオゾンを使えば殺菌ができるので、多めに削る必要はなく、麻酔もいらない。穴があいていない初期の虫歯なら、ほとんど削らなくていいし、穴があいている場合でも虫歯の部分を削るだけでいい。その後、虫歯の部分にカップをかぶせ、外に気体がもれない状態にしてオゾンを20〜60秒当てるだけでOKなのです」(近藤院長)
 オゾン(O3)は酸素(O2)に高圧の電気をかけることで発生する。口の中で殺菌力の強いオゾンを使うので毒性がないか気になるところだが、「ヒール・オゾン」という治療機器を使えば、オゾンは治療の対象になる歯だけに当てることができ、最終的に機器内に吸い込まれるので問題はないという。
「治療した部分に虫歯のばい菌が残りにくいため、虫歯の再発リスクも低くなります」(近藤院長)
 保険適用外で、治療費は1本3000〜5000円だ。

●レーザー治療
 虫歯の部分にEr:YAG(エルビウム・ヤグ)レーザーの衝撃波を当て、光のエネルギーを爆発させ、虫歯を蒸散させるのがレーザー治療だ。
「レーザーで虫歯を削る治療ですが、虫歯が浅い場合は痛みや不快感は全く感じません。レーザーのトントントンという音が聞こえるだけなので、大人だけでなく子供も安心して受けられます。時間は数秒〜20秒以内ですみます」(昭和大学歯学部・松本光吉教授)
 レーザーで治療した個所は、削られた歯の表面が、瀬戸物のように硬くなってくるので、虫歯になりにくいというメリットもあるという。
 虫歯治療用のEr:YAGレーザーは全国で2000台くらい普及している。これも保険は非適用。治療費は医療機関によって異なるが、1本5000円前後が目安だ。

●3Mix―MP法
 抗生物質など3種類の抗菌剤を混ぜたペースト状の薬品を、虫歯に塗布し治療するのが3Mix―MP(スリーミックス・エムピー)法だ。
 新潟大学大学院の星野悦郎教授と宅重歯科(仙台市)の宅重豊彦院長が開発した。星野教授が約500種類といわれる口腔内のばい菌をすべて殺菌する抗菌剤の組み合わせを発見し、宅重院長がそれをペースト状にして治療に応用する方法を見つけた。
「虫歯の穴の一部分に薬を塗布するだけで、歯の奥に入り込んだばい菌が殺菌され、虫歯の進行が止まり痛みがなくなります。虫歯で死んだ組織以外は削る必要がないので、削ることによる痛みもない。削らずに残した大部分の歯は、カルシウムが沈着して徐々に硬化、健康な歯に戻っていきます。常に歯が痛むほどの重症の虫歯でも、この治療で神経を残すことができる確率は94%に上ります」(宅重院長)
 保険の適用外で、1本の治療費は約2000円。
 虫歯治療も進化しているのだ。

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