膝の痛みを消す簡単トレーニング
ひどくなる前に始める
中高年になって膝が痛くなる原因のほとんどは変形性膝関節症だ。膝の関節軟骨がすり減る病気で、ひどくなると日常生活がままならなくなり、人工関節を余儀なくされる。そうならないごく初期の段階で、痛みを本格化させないための手を打たねばならない。「歩いて治すひざの痛み」(講談社)の著者である順天堂大学医学部の黒澤尚教授に聞いた。
「変形性膝関節症は50歳くらいから始まり、50代では約1割、60代では約4割の人が罹患(りかん)しているといわれます」
診断は膝のレントゲン検査でつくが、なかなかそうスムーズにはいかないのだ。
「最初の症状は朝など動き始めのときの膝のこわばりです。しかし、これは4、5分だけのことなので、本人もあまり気に留めないことが多い。この時期が人によって1、2カ月、あるいは数年続くことがあります。実は、こういう時期にこそ、放置せず“ウオーキング療法と筋肉体操”で膝を強化してやれば、膝のこわばりはとれ、変形性膝関節症を本格化させずにすむことができるのです」
まずウオーキング。歩くとなぜいいのか。
「膝の軟骨には血管がないので、軟骨は必要な栄養や酸素を関節内にある関節液からもらっています。歩くと関節液が巡って軟骨がいい状態になり、痛みが和らぐのです」
どんな歩き方でもいいから、気にせずに歩けばいい。平地を1回20分、週3回から始める。
「動きやすい服装で専用の靴を履いて歩いてください。歩いてみて特に問題がなければ、歩く回数と1回の時間を増やしていきます。しかし1回40分くらいまででウオーキングは十分です」
ウオーキング療法と一緒に行ってほしいのが、3種類の筋肉体操だ。膝の周りの筋肉を鍛えれば、膝の負担が軽くなって痛みは消え、膝を強くすることができる。筋肉体操のやり方は以下の通りだ。
●脚上げ体操
(1)いすに浅めに腰かけて少し前かがみになる。片側の足を直角に曲げ、もう片方の膝はまっすぐ前方に置く(2)前方に置いた足を、膝はそのままの形で、ももの力でゆっくり上げる。かかとが床から10センチ程度の所で1、2、3、4、5と数えながら静止する(3)もう片方の足も同様にやる。ももの前面の大腿四頭筋と腹筋が鍛えられる。
「片側20回ずつで1セット。朝、晩に各1セット、合計で1日2セット行ってください。慣れてきたら足首に0.5キロの重り(アンクルウエート)をつけて行いましょう」
●横上げ体操
(1)横向きに寝る(2)膝を伸ばしたまま脚をゆっくり上げ、かかとが床から10センチ程度の所で止めて5秒間静止したらゆっくり戻す(3)もう片方の足も同様にやる。ももの側面の外側広筋と腰の横の中殿筋が鍛えられる。
「これも脚上げ体操と同じ回数で行い、慣れてきたら足首に重りをつけて行いましょう」
●ボール体操
(1)足を投げ出して座り両膝を少し曲げる(2)両側のももの間にサッカーボールをはさんで力を入れる(3)力を入れたまま1、2、3、4、5と数え、ももの力でボールをつぶす。ももの内側の内側広筋と、ももの付け根内側の内転筋が鍛えられる。
「これも20回で1セット。朝、晩に各1セット、合計1日2セット行ってください」
ウオーキングと3つの筋肉体操で、膝痛とはオサラバだ。
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