百寿者調査でわかった長生きする条件
生活を変えればOKの条件もある
元気に長生きする秘訣は何か。だれもが知りたいこの問いには、まだ明確な答えが出ていないが、慶応義塾大学医学部老年内科の広瀬信義部長は、100歳以上の“百寿者”を調査して、長生きの条件を探った。百寿者にはどんな傾向が見られるのか。広瀬部長に聞いた。
わが国の百寿者の人数は、1970年ごろから徐々に増加し始め、2005年9月現在で2万5554人に達している。女性が男性の約4倍だ。慶応義塾大学医学部老年内科の広瀬信義部長らは、東京23区内の百寿者約1700人のうち302人を訪問調査(認知機能、身体所見、採血、遺伝子解析など)、211人をアンケート調査(病歴、生活歴、性格など)した。その結果から、百寿者には次のような傾向が見られたという。
●人に依存せず自分に肯定的
男性は神経質で、体調の変化に気づいたら早めに医者に行く。依存心が少なく、一人でひょうひょうとやっていく“一匹狼”的タイプが多い。
女性は活動的で社交性があるタイプ。依存心が少ない。面倒見が良くて、若いころ家族の世話をしてきた。
「男女ともに共通して言えるのは、自分の人生を肯定的にとらえていて、幸福感が高いことです」
●アディポネクチン濃度が高い
アディポネクチンは、脂肪細胞から分泌されるタンパク質で、抗糖尿病作用、抗炎症作用、抗動脈硬化作用がある。
「百寿者の血中アディポネクチン濃度は、若年者(20代)の2倍ありました」
アディポネクチン濃度の高いことが、長寿の鍵のひとつのようだ。
●糖尿病にならない
百寿者のうち、糖尿病の人は、5%と少なかった。
「糖尿病になると心筋梗塞や腎不全で死ぬことが多い。40、50代から食事や運動に注意して、糖尿病にならないようにすることが長寿につながります」
●乳製品や果物を多くとる
百寿者は野菜、果物、乳製品、穀類を多くとる人が目立ち、飲料や砂糖が多い若年者と対照的だった。その中でも乳製品や果物を多くとっている人は100歳からの生存期間が長かった。
●喫煙の害に対する防御因子を持つ?
百寿者の喫煙率は男性で30%、女性で10%。やはり長生きするにはたばこは吸わない方がいい。
「ただし男性で30%喫煙者がいることから、長生きする喫煙者は喫煙の害に対する防御因子を持っているのではないかという推測も成り立ちます」
●動脈硬化が進んでいない
頚動脈エコーで動脈硬化の罹患率を見ると、百寿者は60%だった。
「一般に動脈硬化の罹患率は、80代で60%、90代で80%とされています。百寿者の動脈硬化罹患率は80代と同じ。動脈硬化の進んでいる人は90〜100歳で死んでしまうと推測できます。高脂血症、高血圧、糖尿病などにならないようにして、動脈硬化を起こさないようにすることが、長寿に通じるのです」
●認知症になりにくい
百寿者の男性の3分の1、女性の5分の1は認知症がなかった。
「百寿者には、アルツハイマー型認知症になりにくい遺伝子(アポEのU型)を持つ人が多いことがわかっています」
●血液型はB型が多い
通常血液型は、A型が40%、O型が30%、B型が20%、AB型が10%とされている。
「百寿者ではA型が35%、O型が28%、B型が29%、AB型が8%で、B型が多いことがわかりました。なぜそうなのか理由はわかっていません」
自分ではどうしようもないものもあるが、生活を変えることで満たせる条件もある。これらを頭に入れて元気な百寿者を目指そうではないか。
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