痔の最新手術「PPH法」で楽に脱肛が治る

痛みも出血も少なく入院も2、3日ですむ

 痔に対する新しい手術法「PPH法」が注目されている。従来の手術と比べて術後の痛みが少なく、入院も2、3日ですむという。どんな手術法で、どんな痔が対象となるのか。東葛辻仲病院(千葉県我孫子市)の辻仲康伸院長に聞いた。

 PPH法は1993年イタリアで開発された新しい自動縫合器による治療法だ。痔は大別していぼ痔(内痔核・外痔核)、切れ痔(裂肛)、痔ろうの3つがあるが、この手術法の対象となるのは、いぼ痔の中でも重症の内痔核。内痔核は進行すると、排便時などに肛門の外へ脱出する脱肛を起こすが、PPH法はまさにこの脱肛を治療するのに威力を発揮するのだ。
「メスやハサミを使って痔を切除する従来の手術(痔核根治手術)と異なり、PPH法は特殊な自動縫合器を肛門から挿入し、痔の組織の上にある、ゆるんだ下部直腸粘膜を切除、縫合します。ゆるんだ粘膜を切除するので、痔核は元の正しい位置に吊り上げられます。それで痔核に入っている血管も遮断されるため、痔核はしだいに小さくなっていくのです。局所麻酔で、手術時間は約15分ですみます」
 単に痔核がなくなるだけでなく、痔核が脱出してしまうほどにゆるんでいた肛門粘膜組織も、元の位置に戻り正常化することができるのだ。
 PPH法の最大のメリットは、術後の痛みが少ないので、早く職場に戻れることだ。
「通常の手術では、肛門の皮膚にできた傷が術後の痛みの原因となりますが、PPH法では肛門の皮膚には傷ができないので、術後の痛みが少ない。それだけ治りが早く、従来の手術では1週間から10日間の入院が必要ですが、PPH法では2、3日の入院ですみます。当然、社会復帰も早くできます」
 出血も少ない。手術当日にいきむと出血する可能性があるが、翌日からは出血がほとんどないという。
 50歳男性のSさんは、5、6年前から排便時に脱肛するのでそのつど指で戻していた。ところが最近は、排便時だけでなく、歩く、しゃがむなどちょっとした動作で、脱肛しそうになる。それに加えて、排便時、痔からの出血がなかなか止まらなくなってきた。
「約15分のPPH法で脱肛を治療することができました。手術の翌日から普通食を取られ、手術後3日目に退院。退院されて3日目から職場に復帰されました」
 PPH法は、脱肛などを起こす人に伴いがちな直腸粘膜脱の治療にも効果を発揮するという。
 60歳男性のTさんは30年前に脱肛の手術を受けた。この2、3年、直腸が肛門から脱出するようになり、ときどき出血もするようになった。近くの医者で直腸粘膜脱を治すには、肛門形成術が必要で2、3週間の入院を要するといわれた。PPH法のことを聞き、東葛辻仲病院を受診した。
「PPH法で直腸粘膜脱出部分を切除しました。それで悩みはなくなり。術後3日目に退院されました」
 PPH法は、昨年11月に厚生労働省の先進医療として認められている。特殊な専用器械を使いこなして短時間で手術をすませるには、それなりに医師の技術も必要だという。またクルミ大など大きすぎる痔核は、PPH法の対象にはならず、従来の手術で切除するしかないそうだ。
「PPH法で治療できる痔で、きちんと手術を受ければ、再発はありません」
 費用は3日間の入院費も含めて約15万円かかる。


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