キレーション療法ってなに?
狭心症や心筋梗塞など生活習慣病治療に朗報か
狭心症や心筋梗塞をはじめとする生活習慣病の新しい治療法「キレーション療法」が、日本にも上陸した。血管の動脈硬化の改善や、体内の有害な重金属の排泄を目的とした治療法で、米国ではすでに80万人以上がこの治療を受けている。6月から治療を開始した九段クリニック・阿部博幸理事長に聞いた。
キレーション療法は、米国で発展した生活習慣病の新しい治療法だ。
「水銀、鉛、ヒ素、アルミニウムなど、我々の体には有害な重金属がたまっています。これらが酵素と結合すると、酵素の働きを阻害して血管、神経、臓器などにダメージを与えます。まず、尿検査で体内に有害な重金属がどれだけあるかを測定し、キレーション療法を行います。具体的には、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)と呼ばれる合成アミノ酸に総合ビタミン剤を加えたものを、約1時間点滴します。この特別な輸液が血管の中に入ると、複雑な生化学反応により有害な重金属が除去され、尿や便の中に排泄されるのです」
狭心症や心筋梗塞の治療の基本は(1)薬(2)バイパス手術(3)風船治療だが、これらの治療でうまくいかない場合や、これらの治療を受けたくない場合に、キレーション治療が行われるという。ボロボロになった血管を修復させることが期待できる。現段階では、米国で副作用はほとんど報告されていないという。
狭心症や心筋梗塞の第4の治療法ともいえるのだが、米国立衛生研究所(NIH)は、2002年に、狭心症や心筋梗塞に対するキレーション療法の医学的な効果を検証するために、3000万ドルの資金提供を行って、大規模調査を開始した。約2300人の心臓病の被験者を対象とした調査で、結果はまだ出ていないが、期待が寄せられている。
九段クリニックでこの治療を受けた70歳男性は、動脈硬化で足の血管が詰まる閉塞性動脈硬化症。足の痛みやしびれでほとんど歩けない。2年ほど、血管を拡張させるプロスタグランジンの点滴治療を行ったがよくならず、キレーション治療を受けることにした。重金属の測定では、尿に水銀やヒ素が多く出ていた。
「週1回の治療を2回行った時点で、5分くらい休まずに歩けるようになりました。4回で15分、6回で20分、7回目で2キロも歩くことができるようになり、脈波測定でも下肢の血流が良くなっていることが確認されました。今度、下肢のMRIを撮って血管の状態をチェックする予定です」
狭心症や糖尿病、むずむず脚症候群の患者も、この治療を始めた。
「狭心症の方は冠拡張薬も飲まれていますが、この治療で冠動脈の血流が良くなればと思っています。血糖値がなかなか下がらない糖尿病の方は、網膜症や腎症など糖尿病の合併症の予防が目的です」
乾癬(かんせん)、血栓性静脈炎、パーキンソン病、重金属中毒、糖尿病による壊疽(えそ)、強皮症、加齢に伴うシワやシミなどの改善にも効果が期待できるという。
健康保険はきかず、1回の治療費は5万円。月に2〜4回、20回受けるのがベストという。九段クリニックのほかには、「スピックサロン・メディカルクリニック」((電話)0467・22・3000)や「満尾クリニック」((電話)03・5771・0125)でもこの治療を行っている。
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