結核にやられやすい人
“復活した感染症”結核が、どんどん勢いを増している。年間3万2000人が発病、そのうち7%、ざっと2300人が死亡している。発病して1年以内の死亡も増えているという。特に要注意なのは中高年。最近の発病の大半は子供時代に感染した中高年だが、どんな人が発病リスクが高いのか。また見逃してはならない症状は? 結核予防会結核研究所の森亨所長に聞いた。
同じように結核菌に感染しても、結核を発病するかどうかは人によって違う。その“分かれ目”は第一に、「何か病気を持っているかどうか」だ。森所長によると、以下のような病気持ちが結核になりやすい。
●糖尿病の人
「健康な人に比べて発病リスクは5倍です。感染に対する抵抗力が弱くなっているのが原因と推定されます」
●胃かいようの人
体質的に結核菌に対して、抵抗力が弱いのかもしれない。
●リウマチ治療などで副腎皮質ホルモン剤やTNFα阻害剤を使っている
「副腎皮質ホルモン剤の使用量によっては、リスクが30倍にもなることがあるとされています」
●慢性腎不全で人工透析を受けている人
腎機能が悪いと、免疫力も落ちやすい。
●塵肺の人
塵肺は、仕事で石や陶磁器などを扱っていて、鉱物性の粉塵を吸入したために肺に病変が起こった状態。こういう肺は感染に弱いといえる。
●がんの人
全身衰弱、抗がん剤や放射線治療で免疫力が低下し、感染に弱くなっている。
●エイズの人
発病リスクは200倍になるといわれている。
もうひとつ、「ライフスタイルや体格」によっても結核発病リスクが違ってくる。
●ヘビースモーカー
1日30本以上たばこを吸っている人。肺の免疫力が落ちる傾向がある。
●職場や家庭でのストレスが強い人
リストラに遭って失職したとか、逆に昇進して責任が重くなったようなときも危ない。強いストレスが免疫力を落とす。
●栄養状態の悪い人
過度のダイエットなどで栄養状態が悪くなっていると、体の免疫力も落ちてくる。
●アル中気味の人
生活のリズムが悪く、精神的ストレスもたまりやすい。
●やせ形で背の高い男性
「理由はわかりませんが、こういう体格の人に多い傾向があります」
●社会経済的弱者
大都市に住み、無職で生活保護を受けているような人、つまり健康管理の機会に恵まれない人に多い。
それでは、どんな症状が出てきたら、結核の黄信号なのか。
「せきが2週間以上続いたら要注意。医者でも風邪でかたづけられてしまうかもしれませんが、結核を疑って、病院の呼吸器科などで胸部エックス線検査とたんの検査を受けてください。結核も早く見つけて、確実に治すことが大切。6カ月間の化学療法で治しますが、入院は最初の1、2カ月ですみます。結核も治療が遅れると死に至るし、治療が中途半端だと、薬剤耐性菌が出てきて、治りにくくなります」
自分のリスクを十分知った上で、初期症状を見逃さないことだ。
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