超悪玉コレステロール多いと心筋梗塞の確率ハネ上がる

健康診断で「コレステロール異常なし」でも危ない

 コレステロールに「善玉(HDL)」と「悪玉(LDL)」があることはよく知られているが、最近注目を集めているのが悪玉中の悪玉である「超悪玉コレステロール(スモールデンスLDL・小型で比重が重いLDL)だ。総コレステロールはそんなに多くなくても、超悪玉コレステロールが多いと、心筋梗塞になる確率がはね上がり、30代、40代で突然死を招くことがあるのだ。超悪玉コレステロールの正体と、それをためない対策について、東邦大学医学部内科学糖尿病代謝内分泌科の芳野原(げん)教授に聞いた。

 健康診断や人間ドックの検査結果で、動脈硬化の指標として最も気になるのが、コレステロール値。そして心筋梗塞との関係でがぜん注目を集めているのが「超悪玉コレステロール」だ。
 心筋梗塞というと、総コレステロール値やLDLコレステロール値が高く、HDLコレステロール値が低いと考えるのが一般的だが、必ずしもそうではない。前の2つがそんなに高くなくても、心筋梗塞で突然死することがあるのだ。
 心筋梗塞を起こしてあやうく助かった50代男性のTさんは、総コレステロールが180(基準値130〜219)、LDLが110(50〜139)、HDLが40(40〜99)、中性脂肪値が160(30〜149)だった。血圧も高くなかった。動脈硬化を起こす危険因子として考えられるのは、ヘビースモーカーであることくらいだった。しかし精密検査したところ、正常サイズのLDLが少なく、超悪玉が半分以上もあった。
「日本人では心筋梗塞を起こす人で総コレステロール値が高い人は、2割しかいません。しかしLDLコレステロールに着目すると、粒子径が小さく比重が重い超悪玉コレステロールを多く持つ“パターンB”の人は、正常粒子径のLDLを多く持つ“パターンA”の人より心筋梗塞発生率が3倍高い。そして心筋梗塞発症例の7割以上が、超悪玉コレステロールが約半分以上の“パターンB”だとする報告もあります」
 超悪玉コレステロールの原因は、中性脂肪値が高い高中性脂肪血症にある。
「中性脂肪値が高いと善玉コレステロールが減って、超悪玉の小型LDLが増えます。これが血管壁に入って酸化LDLになると、それを多く取り込んだ白血球が増えてプラーク(コレステロールなどが固まったもの)を作る。不安定なプラークが破裂して血小板や赤血球が心臓の冠状動脈を完全に詰まらせると、心筋梗塞が発症するのです」
 LDLコレステロールのように血管に直接付着して動脈硬化を進めるわけではないが、中性脂肪は間接的に超悪玉コレステロールを増やす動脈硬化の黒幕的存在なのだ。実際、高中性脂肪血症の人には心筋梗塞の発症率が高いというデータもある。
 それでは、超悪玉LDLをためこまず、酸化LDLも作りにくくするには、どうすればいいのか。芳野教授が挙げるのは以下の5カ条だ。
(1)中性脂肪を増やす甘いお菓子や生クリームなどを多く食べない。
(2)焼き肉、脂身の多い肉などの高脂肪食を控えめにする。
(3)減塩に注意をする。
(4)酸化LDLを増やさないために禁煙する。
(5)野菜、少量の赤ワイン、ビタミンCやEなど、酸化を防ぐ食品を意識してとる。
 健康診断で「コレステロール値は異常なし」と出ても、決して油断はできない。中性脂肪値が高い人はもちろん、家族に狭心症や心筋梗塞を発症したことがある人は、病院で一度、超悪玉コレステロールのチェックを受け、心筋梗塞のリスクを知っておいた方がいい。


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