心臓リハビリのすごい効果

狭心症や心筋梗塞の予防にも活用できる!


 狭心症や心筋梗塞などの心臓病を患った後に、残った心臓の働きを最大限生かして、生活の質を高めるのが心臓リハビリテーションだ。欧米では医者も患者もその重要性を認識しているが、日本では積極的に取り組んでいる施設はまだ少ない。実はこの心臓リハビリテーションは、心臓病の患者の予後を良くするだけでなく、心臓病のリスクが高い人の心臓病の予防にもつながるのだ。心臓リハビリテーションを積極的に推進している榊原記念病院循環器内科の長山雅俊副部長に聞いた。

 心臓リハビリテーションの中核となるのは、外来通院による運動療法だ。榊原記念病院では、退院後、原則として週3回、3カ月間、自転車やトレッドミルなどを備えた心臓リハビリテーション室で運動プログラムを実行する。
「リハビリ室での運動は、約1時間ほど行います。準備運動としてのエアロビクスを15分、主運動のエルゴメーター(自転車こぎ)かトレッドミル(ベルトコンベヤーの上を歩く)を20〜30分、その後、ゴムチューブなどを使った筋力トレーニングを10分ほど行います。各人の運動量は、心臓病の程度、残存心機能、体力レベルなどから運動時目標脈拍数(100〜120)を決め、そこまで心拍が上がるように設定します。ややきついと感じるが運動しながら会話ができる程度の運動強度です」 
 運動効果が出てくると心拍数が上がりにくくなるので、自転車のワット数(電力)や歩くスピードを上げて運動強度を強めていく。
 心臓弁膜症で人工弁置換術を受けた60代男性患者は、退院後、トレッドミルを中心とする運動療法を開始した。
「3カ月間のトレーニングで、健康な同年代の人の69%しかなかった運動能力が、82%まで高まりました」
 2本の冠動脈がともに90%も狭くなっていた90代の狭心症の男性は、500メートルの平地歩行でも狭心症発作を起こしていた。
「リハビリに参加して運動能力が倍以上に高まり、狭心症発作も起こらなくなりました」
 心筋梗塞や心不全に対しても、効果があることが確認されている。
 この心臓リハビリを、心臓病のリスクが高いメタボリックシンドロームの人が行えば、心臓病予防効果は抜群だ。メタボリックシンドロームというのは、男性なら腹囲が85センチ以上で高血圧、高中性脂肪血症、低い善玉コレステロール値、高血糖のうち2つ以上に該当する人。40歳以上の男性の4人に1人はメタボリックシンドロームとされている。
「こういう人たちが、心臓リハビリに力を入れている施設で、自分の心機能や体力レベルを測定してもらい、運動時目標脈拍数を決めて運動療法を実行すれば、心臓病のリスクをかなり低くできるはずです」
 週3回程度、屋外歩行をするのもいいし、施設やジムで、自転車こぎやトレッドミル、エアロビクスをやるのもいい。
「健康な人も、病気を持った人も、最大運動能力を1メッツ増やすことができれば、10年間の生存率を、10〜20%上げることができるとされています」
 メッツはエネルギー消費を表す単位。3カ月の心臓リハビリで1メッツ以上上げることはそう難しくはないという。
 なお心臓リハビリテーションに力を入れている施設は、この榊原記念病院のほかに、群馬県立心臓血管センター、心臓血管研究所、埼玉医大病院、聖マリアンナ医大病院、小田原循環器病院、国立循環器病センター、関西医大、九州厚生年金病院、小倉記念病院などがある。

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