脳出血、クモ膜下出血 これが前触れだ
 
 2人の有名人が脳卒中で相次ぎ急死した。人気プロレスラーの橋本真也さん(享年40)は脳幹出血(脳出血)。「環太平洋のリゾート王」と呼ばれ、長銀破綻劇の主役の一人だったイ・アイ・イ―インターナショナルの高橋治則元社長(同59)はクモ膜下出血だ。 
 この脳出血とクモ膜下出血は、いきなりドーンとくるように思われているが、そうとは限らない。発作に襲われる前に予兆がある場合が結構あるのだ。それを見逃さずに即対処すれば、本格的な出血を免れ、命を危険にさらさずに済む。どんな前触れがあるのか、専門医に聞いた。 
 脳出血はほとんどが高血圧を長年放置したツケによる。「くどうちあき脳神経外科クリニック」の工藤千秋院長が言う。 
「脳出血には、脳梗塞のような典型的な前触れ症状はありません。しかし出血が起こる前には、血圧は一段と高くなっているので、数日前から、次のような症状が表れることがあります」 
●頭が重苦しくなり、のぼせるような感じがする 
●まっすぐ歩けないようなフラフラするめまいを感じる 
●常に顔がほてる感じがする 
●顔が赤くなって気分が悪く吐き気がする。人からいつものような元気がないといわれる 
「これらの症状が、単独や重複して出ます。少し変だと思って医者にかかっても、疲れや寝不足で片付けられてしまうこともありえます。だから、いつもと違うと感じたときは、病院で血圧測定、心電図、胸部レントゲン検査を受けてください。脳出血が間近に迫っていると判断されれば、1日か2日入院して血圧を下げる薬や頭の重苦しさをとる薬の点滴を行い、脳出血のリスクをかなり下げることができます」(工藤千秋院長) 
「日赤医療センター」脳神経外科の鈴木一郎部長が指摘する前触れとアドバイスは次の通りだ。 
●片側の手や足にしびれを感じることがある 
●歩こうとしても、片側の手や足が動きにくい 
●人に話しかけられてもぼんやりして、すぐに答えられないことがある 
「脳出血が起こる最後のひと押しとなるのは、動脈硬化によってできた脳の基底部にある穿通動脈の小さな動脈瘤が破れることです。ですから、脳出血の前触れとして、動脈硬化からくる症状が出たとしても、不思議ではないのです」 
 クモ膜下出血についてはどうか。同じく鈴木部長に聞いた。 
「少し軽い出血があって、その1、2週間後にドカーンとくることがあります」 
 その軽い出血による前触れはこうだ。 
●軽いがこれまで経験したことのない頭痛が数日間続く 
●首を曲げようとしても後頭部が硬く痛くて曲がらない 
●頭痛がするときに吐き気がすることがある 
●デスクワークをしているときなどに、意識がフーッと遠くなることがある 
●人と話をしていて、言葉がいまひとつハッキリ出てこないことがある 
「軽い頭痛でも、いつもと違うと感じたら、脳外科か神経内科を受診して、脳のCT検査を受けてください」 
 近くのクリニックを受診して“風邪や頭痛”と誤診され、家に着いた途端に本格的な発作で命を落とすということもあるのだ。 
 まず、これらの前触れを見逃さないこと。それが脳出血・クモ膜下出血による突然死を免れる必須対策なのだ。
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