こんなかゆみは怖い

糖尿病、腎臓病、急性肝炎などのサインのことがある

 皮膚の炎症や湿疹でかゆいという経験はだれにもある。ところが、かゆみが、それまで気づかなかった病気のサインのことがあるのをご存じか? かゆみで受診して検査を進めたら、思わぬ重大病が見つかることがあるのだ。専門医に聞いた。

●時々、手や足の先がむずがゆい。胸、おなか、背中など、体のあちこちもかゆくなってくる
 糖尿病が進行している可能性がある。
「手や足の先がむずがゆくなるのは、糖尿病の合併症の一つである神経障害が起き始めている可能性があります。“痛がゆい”と表現する人もいます。また糖尿病で全身がかゆくなるのは、糖尿病のコントロールが悪くて体が軽い脱水症状に陥り、皮膚が乾燥するからです」(かたやま内科クリニック・片山隆司院長)
 手や足のむずがゆさで受診して、糖尿病が発見される例も少なくないという。
●寝床に入って体が温まってくると、背中、足、腕などに、かきむしりたくなるような強いかゆみが出てきて、朝起きるとかき傷がついている
 腎臓病がかなり進行している可能性がある。
「腎臓病の人がかゆみを訴える原因は2つあります。一つは、腎臓の機能の低下によって、尿中に排出しきれなくなった体の毒素が皮下組織に沈着するから。もう一つは、腎臓の悪い人は、皮膚が乾燥しやすいからです」(医新クリニック・田原達雄医師)
 ほかに、体がだるくて食欲がない、血圧が上がってきたなどの症状もあれば、腎臓病の疑いはより強い。血液検査でクレアチニン値など腎機能のチェックを受けよう。すでに腎不全になっていて、人工透析寸前という可能性もある。
●ある日突然、おなかや手足に、夜も眠れないほどのひどいかゆみが
 急性肝炎の疑いがある。
「急性肝炎で黄だんが出ると、皮膚にビリルビンという色素がくっつき、それが刺激となってかゆみを起こすのです。体がだるくて尿が濃くなるなどの症状もあれば、その疑いはさらに濃くなります」(日本鋼管病院・高橋伸副院長)
 かゆみ止めの軟膏を塗ってもかゆみは治まらない。内科で血液検査を受けて肝機能のチェックを。急性肝炎との診断がつけば、黄だんをとる治療が必要だ。
●おなか、背中、手のひら、足の裏がかゆくなりやすい
 甲状腺機能亢進症か甲状腺機能低下症の疑いがある。
「甲状腺機能亢進症になると、代謝が亢進して体が熱を産生しやすくなり、皮膚の温度が上がりやすくなります。そのために感覚の閾値(いきち)が下がってきて、かゆみや痛みを感じやすくなるのです。一方、甲状腺機能低下症では、皮膚が乾燥しやすくなってかゆみを感じやすくなります」(西新宿プラザクリニック・織田敏彦副院長)
 血液検査で甲状腺機能のチェックを。
●体のあちこちがかゆい。少しずつだが、かゆみの強さが増してくる
 それに加えてみぞおちの右側や背中に痛みがあれば、胆管がんやすい臓がんの疑いがある。
「どちらも、がんで胆管が詰まって胆汁の流れが悪くなり、黄だんが出てきます。黄だんが出ると皮膚にビリルビンが沈着してかゆみを誘発します」(前出の高橋伸副院長)
 かゆみを訴えて受診して胆管がんが見つかったケースもあるという。
 たかがかゆみと侮ってはならない。そのかゆみは大丈夫ですか?

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