“うつ病”放置したらどうなる?

気づかないことも多いから気になる

 うつ病は、放置されやすい病気だ。仕事や家族など社会的な影響から、病気に気づきながら放置されることもあるが、病気そのものに気がつかないケースが少なくない。うつ病が放置されると、どうなるのか? 帝京大板橋病院心療内科の中尾睦宏准教授に聞いた。
 Sさん(45歳)は、1年ほど前から時々めまいがしていた。半年くらいたつと肩や首の凝り、胸の痛みなども重なったが、休日に回復。「疲れのせい」と気にしなかった。それから2カ月後には、食欲が低下し、食べると下痢し、体重が8キロも減った。検査結果に異常はなく、治療はせず。
 その後、不眠で疲労感が増して、登校拒否の娘を助けられない自分を情けなく思うように。そして、職場でトラブルが発生。トラブル処理に伴う残業のせいか、集中力や視力の衰えに気づく。残務処理を終えたら、スーッとやる気がうせたが、休むに休めない。退職を意識するようになり、家族の勧めで病院を受診した。うつ病だった。
「めまいや凝り、痛み、食欲の低下、下痢、疲労感などは、いずれもうつ病の身体症状です。うつ病特有のやる気の低下が出たのは受診直前、ほぼ1年後のこと。うつ病は、身体症状が先に出て、抑うつや興味の衰えという病気特有の症状は、その後に続くケースが多い。これが病気が放置され、悪化する原因のひとつなのです」
 うつ病の経過には、大ざっぱなパターンがある。痛みや凝り、疲労感などの心身の不調→食欲や性欲の低下、仕事でのミス→ミス続きの自分にいら立つ、朝起きるのがつらい→朝起きられない、イライラが強まる→うまくいかないのは自分のせいだと思う→自分はいなくなった方がいいと思う→死んだ方がましと考えるようになる。
 うつ病の最悪の結果に自殺があるのは、よく知られているが、極限まで落ち込んだ人が自殺するのではないという。
「もっとも自殺が起こりやすいのは、ちょっと回復した状態です。極限まで落ち込んだ状態では、自殺する行動さえも取れません。回復期の挫折感こそが、“やっぱり自分はダメだ”という感情を生んで、自殺を引き起こすのです」
 自殺ではなく、リストカットなどの自傷行為になる場合もある。いずれにせよ危険な状況だ。
 うつ病は治療すれば治るが、発見が遅れればそれだけ治りも遅い。早期発見が重要だ。
「抑うつ傾向や身体症状、血液検査など幅広い項目を1年間追跡調査した結果、6項目がうつ病のリスクとして浮上しました。興味の低下、腰痛、関節痛、めまい、中性脂肪値の上昇、朝食の乱れ――です。中性脂肪値には異論がありますが、食事の乱れの影響と考えれば納得できます。特に痛みやめまいなどの身体症状は、数が増えるほどうつ病の可能性が高くなります」
 思わぬ身体症状も、うつ病の場合があるということだ。@


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