正しい脂肪の摂取法



日本人の不足は深刻

「日本人は食の欧米化で脂肪の取り過ぎ。粗食にすべきだ」――。そう信じている中高年は多いが、本当だろうか? 桜美林大学の柴田博教授(老年学)によると実際は逆。「いまや日本人の脂肪不足は深刻で、その摂取量は中国にも抜かれ開発途上国並みです。脂肪をもっと取らないと、感染症や心疾患、うつ病が増えて短命になる」と警告する。“短命にならない正しい脂肪の取り方”を柴田教授に聞いた。

「日本人が脂肪を取り過ぎているというのは大いなる誤解です。国連食糧農業機関の調査によると、国民1人1日当たりの脂肪供給量(摂取量での統計がない国が多いため)は、米国人155.4グラム、フランス人168.3グラムに対し、日本人は86.2グラム。中国人の96.4グラムより少ないのです」
 問題は脂肪の供給量が少ないほど短命であることだ。
「世界137カ国の男性の脂肪供給量と平均寿命の関係を調べたところ、1人当たりの脂肪供給量が多いほど、平均寿命が長いことがわかっています。1人1日当たり125グラム以上では、ややマイナスの傾向になりますが、それでも、脂肪の少ない国々と比較すると寿命は長いのです」
 そもそも日本人の平均寿命がわずか60年間で30年以上延びたのも、1日当たりの脂肪摂取量が3倍増になったことと無関係ではない。
「脂肪はエネルギー源としてだけではなく、脂溶性のビタミンやホルモンの貯蔵庫の役割も果たしています。ですから、その量が減ると老化が進む。また複数の疫学調査によると、これまでの健康常識は間違いで、脂肪の一種のコレステロール値が低いほど、がんや脳卒中、心筋梗塞、うつ病、認知症になりやすいことがわかっています」
 最近若い人に感染症が多いのも「脂肪不足で抵抗力が弱ったため。今後は肺炎などの感染症が心配」と言う。

 では脂肪不足を解消するには、どうすればいいのか?
「単に多く取ればいいのではありません。大事なのはバランスです。脂肪には(1)バターに多い飽和脂肪酸(2)オリーブ油に多い一価不飽和脂肪酸(3)多価不飽和脂肪酸の3種類があります。この3つを均等に取ることです。1日当たり魚と肉をそれぞれ70〜80グラム、それに食用油を15〜18グラムが理想です」
 しかし、バターなどの飽和脂肪酸はできるだけ減らして、多価不飽和脂肪酸をできるだけ多く取るようアドバイスする専門家もいる。
 しかし「多価不飽和脂肪酸ばかり取ると体の中に酸化物ができやすくなり、老化や動脈硬化リスクが高まる」ので要注意。むろん「年を取ったから肉を避けて魚だけというのも間違い」だ。
「肉には飽和脂肪酸1、一価不飽和脂肪酸5、多価不飽和脂肪酸4の割合で脂肪が含まれています。肉を食べるということは、オリーブ油に多い一価の不飽和脂肪酸を取るのと同じなのです」
 なお、肉はロースやヒレ肉ばかりでなく、胃や腸などの内臓肉も取ること。脂肪もできるだけ“生”に近い形で取る方が、長寿につながるという。





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