心筋梗塞に移行する危険な胸の痛み

しばらくして自然に治まったからといって安心はできない

「胸に突然痛みが走り、しばらくして自然に治まった」というとき、あなたならどうする? 仕事のことなどを考え、「痛みが治まったから、まあ大丈夫だろう」と放っておく人も少なくないはずだ。
 専門医はどこをポイントに判断するのか?
「心筋梗塞に移行する危険な胸の痛みか、そうでないかは、症状を正確に伝えていただくことによって、かなり高い確率で診断できる」と言う榊原記念病院の住吉徹哉副院長に聞いた。
「心筋梗塞の3分の2には狭心症という前兆がありますが、危ない胸痛かどうか見分けるために、まずその症状を詳しく尋ねます」
 狭心症の診断をつけるために、大切な質問が5つあるという。それは(1)どんな症状か(2)最初の症状はいつか(3)その症状は以後どのような時間帯に起こるか(4)症状は何をしているときに起こるか(5)症状はどれくらい続くかだ。
「(1)に関しては、狭心症の場合は“痛い”というより、胸の真ん中から左側にかけて何となく“重苦しい”“圧迫される”“締めつけられる”と表現する人が圧倒的に多いのです。“(指でさして)ここが痛い”“胸がチクチク痛い”と答える方は狭心症でないことがほとんどです」
 そして特に大切なのが(5)の質問だ。
「症状の持続は、狭心症の場合、短いもので1〜2分、長くても10〜15分ぐらいです」

 住吉副院長が「危険な胸痛」と判断するのは、以上の質問で狭心症が疑われ、さらに「何もしていないときに20〜30分続く胸の痛みがあった」「ちょっとした日常的な動作(普通に歩いているなど)でも胸の痛みが生じるようになった」「これまでにもたまにあった漠然とした胸の痛みが、最近回数が増え、ひどくなった(持続時間が長くなったり、痛みが強くなった)」という回答があった場合だ。
「狭心症には2つのタイプがあって、ひとつはすぐには心筋梗塞につながることがない“安定狭心症”、もうひとつが、1カ月以内に高い確率で心筋梗塞を発症する“不安定狭心症”です。私が“危険な胸痛”と判断するのは、この不安定狭心症と考えられる症状を示す場合です。つまり、ここ1〜2カ月の間に胸の痛みの回数、強度、持続時間などが悪化してきているものです。このような患者さんが外来に来られたら、たとえその時に症状が治まっていても、私は “このまま帰らず、すぐに入院してください”と言います。それほど危険な状態なのです」
 心筋梗塞を起こす前の不安定狭心症の段階で入院し、適切な治療が行われれば、ほとんど命を落とすことはない。しかし心筋梗塞を起こしてしまうと、病院にたどり着く前、発症1時間以内に命を落とす危険性がとても高いのだ。
 危ない「サイン」を見逃してはいけない。


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