■その咳は結核かも!

対策は大丈夫か?

 ある大病院に取材に行ったときのことだ。たまたま知り合いの医師に会ったら、マスクをしている。
「風邪ですか? それとも花粉症ですか?」
 聞くと「いやいや、ちょっと」と言葉をにごす。一緒にエレベーターに乗り、周囲に人がいなくなると、医師が言った。
「実は結核の患者さんが最近なぜか多いんです。マスクで感染を完全予防できるわけではないですが、気分的なもので……」
 数年前から結核の流行が言われるようになった。しかし、結核対策について知っているかというと、よく分からない。本当に結核は増えているのか? 感染したら、どうなるのか? 専門家に聞いた。

●増えているのか?
「1950年をピークに患者数は減少していましたが、今はその減り方が鈍り、ほぼ横ばいです。いま東京都だけで毎年3500人前後の新規登録患者がいます。結核菌に感染すると、発症しなくても体内に菌が潜んでいますから、そういう意味では相対的に結核は増えています」(東京都福祉保健局健康安全室感染症対策課の担当者)
 しかも「新たな問題が出ている」と言うのは、前結核研究所所長で国立感染症研究所ハンセン病研究センター長の森亨氏だ。
「重症化し薬が効きにくい結核が多いのです。さらに、都心部での結核患者が増えている。かつては東京の患者数は下から数えた方が早かったが、今では大阪に次いで第2位。しかも、20〜30代に多いのが特徴です」

●症状は? 
「咳(せき)、痰(たん)、発熱と、風邪とそっくりで見分けがつきません。違いは風邪症状が長引くこと。2週間以上続けば検査を受けるべきです」(森氏)
 厄介なのは“見逃し”のリスクがある点だ。「診断自体は難しくないが、結核を頭に置いていない医師が少なくない」(森氏)からだ。

●進行するとどうなる?
「早期なら人にうつらないので、入院せず薬の服用で治療を行います。しかし進行して痰の中に結核菌が出てくると、人にうつるので入院しなければならない。平均2〜3カ月です。退院後も6〜9カ月間、薬を服用しなければなりません」(前出の感染症対策課担当者)
 結核は早く治療をすれば治るが、早期治療でない人が多い。「患者の6割が入院が必要な、進行した患者」(森氏)で、治るまで時間がかかる。
「薬の量を途中で減らしたり、やめる人もいるのですが、そうすると再発して結核菌が耐性を持ち、薬の効きが悪くなる。死亡するケースもあります」(森氏)

●発症しやすい人は?
「糖尿病や胃かいようの人、人工透析を受けている人、過度のダイエットをしている人、喫煙習慣のある人などです。体質的に、やせてひょろっとした人も発症しやすい」(森氏)
 感染者の発症率は10〜30%。半年から2年以内に発症するケースが多いという。

●対策は?
 感染を完全に防ぐ方法は、残念ながらない。マスクをしていても駄目だ。
「基本的なことですが、規則正しい生活を送って免疫力を下げないようにすること、咳をしている人には近づかないことなどを、地道にやるしかありません」(感染症対策課担当者)



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