“新型水虫”
●中南米のトンズランス菌が日本でも広がる
頭や腹に発疹が出る“新型水虫”に感染する人が急増しているという。万が一、感染したらどう対処すればいいのか? 順天堂練馬病院皮膚アレルギー科の比留間政太郎教授に聞いた。
Mさんは額の左側に赤い発疹が丸く出始めた。かゆみはそれほどでもなく放置していたら、発疹の中心部は治ってきたものの、赤い部分が“5円玉”のように環状に残って不安になり、順天堂練馬病院を受診した。
「検査してみると、トリコフィトン・トンズランスという菌に感染していました。この菌は、水虫を起こす白癬(はくせん)菌の一種。体の皮膚に付着すると体部白癬(タムシ)で、顔や首筋、胴体などに直径1〜2センチほどのかさかさしたピンク色の斑点ができる。頭に感染すると頭部白癬(シラクモ)になって、ふけが増えたり、かさぶたができたりします。いずれにしてもかゆみは強くありません」
トンズランスはもともと、中南米に土着の菌だが、レスリングや柔道などの格闘技を通じて欧米に拡大。2000年以降、日本でもこれらの選手を中心に感染者が急増しているという。
「関東地方でトンズランスの感染を確認したクリニックは97年に1件だけでしたが、01年10件、02年28件、03年54件と増えています。感染経路が格闘技選手なので、感染者の多くは中学や高校の格闘技部員ですが、最近は家族感染などで、一般の人にも感染が拡大しています」
●頭や腹に症状出る。湿疹と間違えると…
急に“5円玉発疹”ができたり、ふけが増え始めた人は要注意。こうした症状があったら、感染を疑って皮膚科の専門医を受診したほうがいい。
「トンズランスの症状は非常に弱く、発疹が擦り傷程度のことも多く、専門医でないと誤診しやすいのです。アレルギー性湿疹だと誤診されステロイド剤を処方されると、症状が悪化します」
治療は、体部白癬と頭部白癬で違う。
体部白癬は、塗り薬が基本。効き目が悪かったり、再発した人は、飲み薬を使う。ダマリンエースやブテナロック、ラマストンMX、アトラントエースなどの市販薬も効果的だが、トンズランス感染と確定した上で使うこと。
頭部白癬で、菌量が少ない人は、抗真菌薬入りシャンプーで治るが、菌量が多い人は内服薬で治療するという。
「治療すれば1〜2週間ほどで症状が消失しますが、医師のOKが出るまで治療を続けることが重要。症状がなくなっても体内に菌が残っている可能性があるのです。そんな人は無症候性キャリアーとなり、感染を拡大させてしまいます」
気になる症状が出たらすぐに病院へ行くことだ。
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