血圧を上10・下5下げれば発症リスクは30%下がる

糖尿病や心臓病は“脳梗塞”の発症リスクを上げる

 脳卒中は、脳の血管が破れたり、詰まったりして発症する。血管が破れるのが脳出血とくも膜下出血で、血管が詰まるのが脳梗塞だ。破れるのと詰まるのとでは、状況がまったく違うように、それぞれのリスクも違う。脳卒中シリーズ第2弾は、「リスクを知る」だ。

 まず血管が破れる脳出血とくも膜下出血だ。
「脳出血は、脳の深部を走る血管がもろくなって切れて出血し、くも膜下出血は、脳の表面の血管の動脈瘤が破れて脳を覆うくも膜下腔に出血します。いずれも血圧による強い負荷がかかったときに発症するので、2つの病気の一番のリスクは高血圧。収縮期血圧が180oHg以上、あるいは拡張期血圧が110oHg以上の重症高血圧の人は非常にハイリスクです」(済生会中央病院・高木誠院長)
 健診などで「血圧を下げてください」と注意されるのは、この発症リスクを下げるためなのだ。血圧を下げれば、リスクは下がる。
「どんな人でも収縮期血圧を10、拡張期血圧を5下げると、30%のリスク低下になるといわれています」(高木院長)
 逆に高血圧の人が喫煙や過度の飲酒をすると、リスクは上がる。たとえば、憂さ晴らしで強い酒をガンガン飲み、たばこもスパスパ。普段以上に飲んだり、吸ったりするのがよくないという。 次は血管が詰まる脳梗塞だ。脳梗塞には、血栓が脳の血管でできる脳血栓と、心臓などでできた血栓が脳に飛んでくる脳塞栓があり、それぞれリスクが異なる。
「脳梗塞のリスクとしては、高血圧や高コレステロール血症などが知られていますが、この2つは脳梗塞の中でも脳血栓のリスクです。あまり知られていませんが、糖尿病も脳血栓と関連があります。狭心症や不整脈、心臓弁膜症などの心臓病は脳塞栓と深い関係があるのですが、ほとんど認識されていません」(滋賀医科大・宮松直美教授)
 リスク認識の甘さは、宮松教授が主任研究者として調査した「脳卒中に関する意識調査」でも明らかだ。高血圧の認識率は94%、高コレステロール血症は77%と高い数字だが、糖尿病は45%、不整脈は38%、心臓病は34%と半分以下だ。
 脳血栓のリスク認識が高く、脳塞栓の理解が悪いということは、一般には「脳梗塞=脳血栓」と見ている人が多いのだろうが、脳塞栓による脳梗塞のことも頭に叩き込んでおくことが大切だ。
「脳塞栓は、高血圧や高コレステロール血症のリスクがなくても、不整脈があれば発症する恐れがあります。その不整脈は加齢とともに頻度が増すので、50〜60代以上は要注意です」(東京医大第二内科・山科章教授)
 リスクをきちんと理解して、それに沿った対策を取ることだ。


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