東幹久と高岡早紀が、「芸能人は歯が命」と叫びながら、白い歯をアピールする歯磨き粉のCMが、あったのを覚えているだろうか? その製品に配合されていたのが、ハイドロキシアパタイト(以下HA)という成分だ。HAは、歯や骨を構成する成分のことで、歯のエナメル質の97%はこれでできている。正体までは知らなくても、響きだけは耳に残っているという人も多いのでは? そんなHAがいま再び脚光を浴びているという。今度は未来の虫歯治療法の切り札として期待されているのだ。

それを証明するかのように先月、ふたつの研究結果が発表された。まずは、東北大学大学院工学研究科・厨川常元教授の研究グループが開発した、HAの微粒子を使った治療法。HAの微粒子を高速で噴射することで、虫歯治療で削り取った部分に歯と同質のHA膜を盛り重ねる。すると、穴の空いた虫歯をほぼ元の状態に戻すことが可能だというのだ。要するに、虫歯で空いた穴を歯で埋めてしまおうという発想だ。(これぞまさに「歯には歯を」)。穴を詰め物でふさぐ今の治療法と違い、膨張や摩耗によって詰め物が取れてしまう心配もない。さらに「HA膜で健常歯をコーティングすれば虫歯予防にも活用できる」と教授は話す。

そしてもうひとつは、FAP歯科研究所と山梨大工学部・鈴木喬教授らのグループが、開発した方法。彼らは歯の表面に塗るとエナメル質と一体化し、同じ結晶を作る人工エナメルの開発に成功した。これで初期虫歯によって歯の表面が溶けた部分に人工エナメルを塗れば、歯を削ることなく治療できるとか。

「エナメル質はこれまで人工的に作ることができなかったんですよ。さらに歯そのものを再生させる究極の治療法も研究されていると聞きますよ」と日本歯科新聞社の記者は解説する。

とはいえどちらも実用化にはまだ時間がかかりそう。ブラッシングでもして気長に待つことにしますか。



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