関節リウマチ患者80万人に朗報!

関節の炎症をゼロにし骨破壊を停止させる

 関節の腫れや痛みに苦しむ関節リウマチの患者は、高齢化で年々増え約80万人に上る。関節リウマチといえば、かつては不治の病で、徐々に悪化し身体障害者になっていくというイメージがあったが、ここにきて治療が大きく進歩、いまや“怖い病気”ではなくなりつつある。聖マリアンナ医科大学難病治療研究センターの岡寛講師に聞いた。

 関節リウマチの治療の根幹をなすのが薬物療法だが、関節リウマチの進行を抑える画期的薬として、1999年に発売されたのが、メソトレキサート(商品名=メソトレキセート、メトレート)だ。
「従来の抗リウマチ薬は関節炎を抑える効果はあったものの、骨破壊の抑制効果がはっきりしなかったのです。関節の炎症が良くなっても、骨破壊が進行すれば手足は変形し、日常生活にも支障をきたします。その点この薬は、関節の炎症を鎮めるだけでなく、関節リウマチの異常な免疫反応を抑制して骨の破壊を抑制、関節リウマチの進行を抑える作用があります。日本でも欧米でも関節リウマチの第一選択薬となっています」

 ひじや手首など全身の関節で炎症が起き、関節の骨が破壊され、やがて関節が変形し、ものを持ったり、立ち上がったりするなどの日常生活に支障をきたす関節リウマチ。
 つらい痛みに苦しめられるこの難病に画期的な薬が開発されたが、それが利用できない患者もいる。そんな人にとって救いとなるのが「白血球除去療法」だ。東京女子医大東医療センターの神戸克明講師に聞いた。
「2003年に登場した生物学的製剤は治療効果の高い薬ですが、患者全体の約10%には使えません。その生物学的製剤の補完的な治療法が、白血球除去療法です」
 関節が変形しているMさん(70歳)は生物学的製剤で症状を抑えていたが、使用後半年で効果が減弱。炎症の程度を示すCRP値(正常値0.3以下)が5に上がっていた。ほかの抗リウマチ薬は副作用の関係で使えず、白血球除去療法を試みたところ、CRP値が2以下に低下したという。
「関節リウマチは、本来異物を排除する働きを持つ白血球が、何らかの理由で自分の関節を包む滑膜を攻撃し、炎症を起こします。つまり病状の進行には、白血球の影響が強い。白血球除去療法は、病気の原因となる白血球を取り除くことで、病状を改善するのです」

 白血球除去療法は、一方の腕の静脈から血液を取り出し、もう一方の腕の静脈に戻す装置で血液を循環させ、その過程でフィルターを通して白血球だけを除去する。しかし、一部に異常があるとはいえ免疫機能を持つ白血球を除去してしまって問題はないのか。
「取り除くのは白血球の一種である好中球で、すべての白血球ではありません。白血球は常に体内で作られていて、除去療法の終了間際の60分後には、正常値に戻ります。そのため目立った副作用がないことも見逃せませんが、それよりも重要なのは、生物学的製剤が使えなかった人でも、白血球除去療法治療でクリーンな血液が供給されると、生物学的製剤を使えるようになること。Mさんは白血球除去療法後に再び生物学的製剤を利用できるようになり、1年後の今も生物学的製剤で炎症が抑えられ、痛みを緩和できています」
 白血球除去療法は、週1回2〜5リットルの血液を処理して、合計5回行う。医療費は5回で75万円かかるが、健康保険が適用され、患者が支払うのは3割負担で約23万円。高額療養費制度で還付を受ければ、最終的な負担は8万円ほどで済む。
 薬を使っても炎症がコントロールできない場合の治療法としては、炎症性物質を発生する滑膜を切除する方法もある。こうした治療を組み合わせることで、病気の進行を食い止めることが可能なのだ。

 さらに関節リウマチ治療に劇的な進歩をもたらしたのが、TNF(腫瘍壊死因子)を標的とした生物学的製剤(TNF―α阻害剤)の登場だ。2003年7月にはインフリキシマブ(商品名=レミケード)、2005年4月にはエタネルセプト(商品名=エンブレル)が発売された。
「TNFは本来なら体内にできた腫瘍を殺す免疫の働きに関係するものですが、関節リウマチにおいてはTNFが関節の滑膜増殖を引き起こし、軟骨の破壊に関連していることがわかりました。レミケードはTNF―α抗体を使うことで、エンブレルはTNF―α受容体をブロックすることで、炎症をほとんどゼロにし、骨の破壊を停止させ、寛解にもっていくことができるのです」
 2つともコストが高く(3割負担で年間30万〜40万円)、感染症にかかりやすくなるなどの欠点はあるが、治療効果が劇的なのだ。
「これらの薬は、活動性が高い関節リウマチを中心に使っていますが、発症6カ月以内の早期の関節リウマチによく効くとされています。レミケード投与22週後の評価では、著効34.0%、有効57.6%で有効率91.6%との報告もあります」

 毎週ゴルフをしていた56歳男性は、53歳のときに関節リウマチになった。54歳のときにある病院でメソトレキサートを使ったが、副作用が出て多くは使えなかった。そのうち手の関節が腫れてきてゴルフができなくなった。
 ストレスがたまって飲み食いに走り、脂肪肝と糖尿病になった。Γ―GTPも400に上がった。岡医師を受診してエンブレルを使ったところ、1カ月ほどで効いてきて毎週ゴルフざんまいの生活を取り戻せた。肝機能も改善し、糖尿病も良くなったという。
 15年前発病した58歳男性は、ひざが痛くて曲げられず歩くのにも支障が出るほどリウマチが進行していた。レミケードを使って1カ月後、歩けるようになって15年ぶりにゴルフができるようになった。
 リウマチ発症3年で手が腫れてキーボードが打てない24歳女性は、従来の抗リウマチ薬もメソトレキサートも効かず、エンブレルを使った。1、2カ月で寛解に入り、手もスムーズに動くようになり第一線で働けるようになった。
「TNF―α阻害剤で寛解し、第一線で働いている人が増えてきているのです」
 関節リウマチの患者に朗報だ。

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