みぞおちが痛む

空腹のときや酒飲んだとき…

 軽い痛みや、めまい、倦怠(けんたい)感など、病院に行くほどではないが気にはなるという症状を持っている人は多い。しかし、医者にかからず放っておいたら、実は思わぬ病気が原因で大発作に襲われ後悔することがあるのだ。その怖さ、恐ろしさを、実例で紹介しよう。1回目は、サラリーマンならたいていは経験する「みぞおちの痛み」だ。聖路加国際病院内科の西崎統医長に聞いた。

●実例1
 Tさん(38歳)は空腹になるとみぞおちが痛むが、食べると治るので放置していた。そんな症状が始まってから1カ月後、みぞおちに焼け火ばしを差し込まれるような激痛を感じて救急車を呼んだ。十二指腸潰瘍の穿孔(せんこう)と診断されて、緊急手術を受けた。
「早い人なら潰瘍ができてから1〜3カ月くらいで、穿孔を起こすことがあります。十二指腸潰瘍や胃潰瘍を大した病気でないと放置していると、穿孔まではいかなくても、吐血したり、胃の出口の幽門部が狭くなって食べ物を吐くなどの症状が出てくるので侮れません」

●実例2
 Sさん(52歳)は食後に胸やけがして、みぞおちが痛むことがしばしばあったが、食べ過ぎのせいだろうと放置していた。1年後、嗜好(しこう)が変化して好物の肉を食べられなくなった。体重も減ってきたので、変だと思って受診したら、胃がんが見つかった。
「すでにかなり進行していて、胃の全摘手術を余儀なくされました」

●実例3
 Oさん(43歳)は酒を飲むと、みぞおちがシクシク痛むことがあったが、大した痛みではないので半年以上放置していた。焼き肉店でウイスキーの水割り5杯、肉を3人前ほど平らげた日の翌朝、みぞおちに、これまでにない激痛が走った。体をエビのように曲げながら、タクシーで病院へ。
「検査の結果、慢性すい炎が急に悪くなって、重症の急性すい炎を起こしている状態でした。緊急入院して集中治療室に入っていただき、絶飲・絶食はもちろん、体に必要な体液成分の補給をしました。血液浄化療法も行い、何とか一命を取り留めました」

●実例4
 Kさん(62歳)は1年ほど前から、おなかいっぱい食事をするたびに、みぞおちが重くなった。胃の検査では問題なしとのことだったので、単なる食べ過ぎだろうと放置していた。ある日のこと、みぞおちの鈍痛とともに呼吸が苦しくなって病院へ。
「検査の結果、心筋梗塞に近い狭心症でした。ある程度高齢で動脈硬化が進んでいる人は、狭心症や心筋梗塞の発作を、典型的症状である胸痛ではなく、みぞおちの鈍痛として感じることがしばしばあります」

●実例5
 Jさん(32歳)はある朝、急にみぞおちが痛くなり、近くの医者を受診した。急性胃炎だろうと言われて胃薬を出されたが、胃薬を飲んでも痛みは治まらなかった。その日の夕方、痛みはみぞおちから右下腹部に移動して猛烈な痛みが。ただ事ではないと大きな病院を受診した。
「虫垂炎で腹膜炎を起こしかけていました。緊急手術で乗り切りました」
 このように、みぞおちの痛みは、さまざまな病気が原因になっている。「不摂生による痛みだろう」などと甘くみていると、とんでもない目に遭う。そのことを肝に銘じておくことだ。

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