鼻から検査「経鼻内視鏡検査」


 数ある検査の中でも胃の内視鏡検査(胃カメラ)はつらいものの一つだ。ところが最近、つらくない鼻から入れる経鼻内視鏡検査が登場し注目を集めている。口から入れる従来の経口内視鏡検査とどう違うのか。東京医科大学病院内視鏡センターで58歳男性が体験した。検査を行ったのは内視鏡センターの河合隆部長(助教授)だ。

 男性は168センチ、63キロの中肉中背。酒は飲まないが、たばこは1日3箱(60本)吸うヘビースモーカーだ。時々だが食後に胃の鈍痛と吐き気を覚える。空腹になるとおなかが痛むこともある。
 3年前に胃の経口内視鏡検査を受けた時、検査結果は問題なかったが、検査自体がつらかった。嘔吐感と窒息感に悩まされ、検査中に「もうやめてくれ」と叫びたいほどだった。今度の経鼻内視鏡検査ではどうなのか。
 検査当日は朝食抜き。午前11時から検査の前処置が始まった。まず胃の中をきれいにするガスコンドロップを飲んだ。次に血管収縮薬プリビナを両方の鼻に噴霧された。鼻を広げて通りを良くするためだ。
 次にジャクソン式スプレーで鼻の中に麻酔薬のキシロカインをスプレーされた。1回目は軽く噴霧し、5分ほど置いてから2回目はやや奥まで入れて噴霧。さらにベッドに横になり喉に麻酔薬を噴霧された。いよいよ検査だ。
 胃の出口が自然に広がる左向きになると、左側の鼻からスコープが挿入された。鼻に少し違和感は感じるが、痛いという感覚は全くない。食道・胃・十二指腸の順にチェックされる。経口内視鏡検査のときに感じた嘔吐感や窒息感は全くない。楽だ。
 それを河合部長に伝えると、こう説明された。
「経口内視鏡の場合、スコープが舌の根元(舌根)に触れるので嘔吐感が起こります。これに対し経鼻内視鏡は、鼻から挿入することでスコープが舌根に触れにくくなるため、嘔吐感はほとんどないのです。鼻の違和感が少なく窒息感もないのは、経口内視鏡スコープが直径9.4ミリあるのに対し、経鼻内視鏡スコープは4.9ミリと約半分の細さだからでしょう」

 経口のときは我慢しているのがやっとで、先生の話を聞いたり、モニターを見る余裕もなかった。しかし経鼻の検査では、検査中にモニターを見ながら医師と会話ができるのだ。正直いってこれには驚いた。心拍数や血圧の上がり方も異なるという。
「経口と経鼻、どちらの場合も心拍数は上がりますが経口の場合は上がり方が大きい。収縮期血圧も経口ではやや増加するのに対して、経鼻ではむしろ低下することがわかっています」と河合部長。
 検査時間は約8分。肝心の結果はどうなのか。
「胃の所々に委縮性胃炎があります。それと胃の真ん中の部分に胃かいようの治ったあとが2カ所あります。胃かいようの再発を防止するためにも、ピロリ菌の除菌治療を受けるべきでしょう。禁煙は即実行してください」との診断結果とキツーイお達しが出た。
 しかし、経鼻内視鏡には課題も残っている。河合部長が言う。
「がんを含めたあらゆる病気の診断はできます。しかし現段階では、がんやポリープの切除などの治療ができないのです。この点については、まずは苦痛が少ない経鼻内視鏡による検査を広く一般の方に知ってもらい、早期がんの発見を増やすことに意味があると考えています。経口内視鏡検査に対する恐怖心から検査が遅れて、進行がんになっている人が少なくないからです。当面、診断は経鼻で、治療は経口でという流れになっていくでしょう」
 東京医科大学病院ではこれまで300件の経鼻内視鏡検査を行い、4件で早期胃がんが見つかっている。この経鼻内視鏡検査は保険が利き3割の自己負担で3600円。

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