肝機能を回復させる3大作戦
昨年1年間に人間ドックを受けたのは270万人。その4人に1人が「肝機能」に何らかの異常があったという。人間ドックで引っ掛かる項目のナンバーワンだ。夏バテによる食欲不振で栄養不足気味だった肝臓は、食欲の秋を迎えて一転、フル回転を始める。それだけに、なおさらメンテナンスの必要があるのだ。杏雲堂病院肝臓科の鵜沼直雄顧問に、疲れた肝臓のリフレッシュ法を聞いた。
人間ドックで見つかる肝機能異常の60%は、脂肪肝といわれる。これは肥満やアルコールの飲み過ぎでなりやすい。
「これまで脂肪肝はそれほど危険な病気ではありませんでしたが、最近は違います。非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)とよばれる肝炎が見つかり、アルコールを飲まない人でも、肝臓に脂肪がたまって、それが原因で肝硬変や肝臓がんを発症するという報告がある。極端な言い方をすると、食べ過ぎで肥満、脂肪肝になった人が、長年アルコールを摂取するよりひどい影響が出る恐れがあるのです」
ウイルス性の肝炎を別にすれば、脂肪肝が肝機能悪化の第一歩。食欲の秋だからといって、暴飲暴食を続けるのは、危険なのだ。そこで具体的な肝臓リフレッシュだ。
(1)糖分や果物を控える
事務機器メーカーのTさん(42歳)は、肥満ではなく、アルコールも飲まないのに、脂肪肝を指摘された。
医師の指導で糖分や果物を控えたら、2週間後の再検査で、43だったGPT値が正常値以下の32に下がり、脂肪肝は解消した。
「果糖や糖分は、肝臓で脂肪として蓄積されやすく、脂肪肝を招きます。肝機能を改善するには、甘いものはもちろん、果糖を含む清涼飲料水も控えるべきです」
(2)ビタミンB1、C、Eを積極摂取
「肝臓は“ビタミン貯蔵庫”で、必要なときにいつでも利用するという役目もあります。しかし、肝機能が弱まると、3分の1近くまで貯蔵能力が急減することもある。ビタミンの補給が欠かせません」
肝臓は“沈黙の臓器”といわれるだけに、少々のダメージではハッキリとした自覚症状がない。ビタミン補給のタイミングが問題だが……。
「疲労感や食欲不振、アルコールが弱くなった、といったことが肝機能低下のシグナルといえばシグナルです。こうした症状が出たら、アルコール分解に必要なビタミンB1や、肝臓病予防効果のあるビタミンC、Eを積極的に取ってください」
(3)タンパク質をたっぷり取る
Sさん(53歳)はビールをジョッキで3杯飲んでから、料理に合わせて日本酒や焼酎を5合ほど飲む生活を30年続け肝硬変に。GOT86、GPT55、γ―GTP333と、どれも基準値を大幅にオーバーしていたが、8カ月の入院生活で治療を受け、断酒をし数値はすべて正常値になった。
「Sさんの回復ぶりは奇跡的ですが、一般的に肝臓は再生能力が高い。肝臓がんなどで7割を切除しても、4カ月後には大きさも機能も元通りに回復します。再生を支えるのが、肝細胞を構成するタンパク質。Sさんのような重度の肝硬変でなくとも、肝臓をリフレッシュするためには十分に補給すべきです」
肉、魚、卵、牛乳、大豆の中から、毎食どれかひとつは摂取したい。
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