胃潰瘍の薬と正しく付き合う


 胃液に含まれる胃酸によって、胃粘膜が消化されて起こる胃潰瘍。“現代サラリーマン病”といわれるほど胃潰瘍持ちは多いが、薬との正しい付き合い方を知っている人は少ない。そこで、「これだけは知っておきたい薬の知識」を、専門家に聞いた。

●胃酸分泌抑制薬のH2ブロッカーは、胃潰瘍が治っても飲み続けねばならない?
「胃潰瘍はいったん良くなっても、その後治療しないと、1年以内に60、70%が再発するとされています。ですから胃潰瘍の症状が消えても、内視鏡で胃潰瘍が“良好に治っている”と診断されるまで、胃潰瘍治療時の半量の薬を飲み続ける必要があります。期間は2、3年ですむ人もいるし、食事療法がずさんな人なら7、8年かかる場合もあります。ただしピロリ菌の除菌をすると、1年以内の胃潰瘍の再発率は2、3%になります。ピロリ菌の除菌治療に成功すれば、薬の服用はそれで終わりになります」(杏林大学医学部・高橋信一教授)

●処方薬と同じ成分が入っているという市販薬で胃潰瘍は治せる?
「最近は処方薬と同じ成分が入った市販薬があって、これらは“スイッチOTC”と呼ばれています。H2ブロッカーにもスイッチOTCがあります。薬の成分の作用は同じですが、市販薬は含まれる有効成分の量が処方薬より少なめになっています。ただし、市販薬で胃潰瘍を自分で治療しようとするのは間違いです。市販薬はあくまで上腹部の痛みや胸焼けなどの症状を、一時的にとるために使うもの。胃潰瘍持ちの人は病院を受診して処方薬で治療を受けることが大切です」(平塚胃腸病院・平塚秀雄理事長)

●ピロリ菌の除菌治療で副作用が出たが、やめるとどうなる?
「除菌治療では、2種類の抗生物質と胃酸の分泌を抑えるプロトンポンプ阻害剤の合計3種類の薬を1週間飲み続けます。この除菌治療で80%の人が除菌に成功するとされています。ところが除菌治療で下痢、軟便、皮膚のアレルギー、出血性腸炎などの副作用が出る人がいます。強い副作用が出たら薬をやめねばなりませんが、途中でやめると除菌に失敗します。再度除菌治療を受けようとしても抗生物質に対する耐性ができて効かなくなっています。したがって下痢、軟便程度の副作用なら除菌治療は続けた方がいいと思います」(高橋教授)

●ストレス性の胃潰瘍でもピロリ菌の除菌治療で再発を防げるか?
「たとえ胃潰瘍発症の引き金が精神的ストレスであっても、胃酸の分泌が増えて血液の流れなど胃の粘膜を守る因子が弱って潰瘍ができてくるというのは、通常の潰瘍のでき方と同じです。したがってストレス性の胃潰瘍の再発防止にも除菌治療は有効です。阪神淡路大震災が来る前に除菌治療を受けていた人は、震災が来ても胃潰瘍の再発は少なかったというデータもあります」(高橋教授)

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