よく食べ休養もとっているのに体がだるい

糖尿病、肝臓病、うつ病、腎臓病などに突き進む

 夏バテで食欲がなくなり睡眠不足が続けば、だれしも体がだるいと感じる。しかし、それは食欲が出て眠れるようになれば解消する。
 問題は、よく食べて休養もとっているのに、だるさが続くときだ。だるさにはいろんな重大病が潜んでいて、放置すると厄介なことになるケースが少なくないのだ。日本生活習慣病予防協会理事長で日比谷医院顧問医の池田義雄医博に聞いた。

●実例1
Tさん(26歳)は春先から体がだるくドリンク剤で栄養補給をしていたが、夏、むしょうにノドが渇くので甘味飲料を毎日2、3リットル飲み続けた。ある日Tさんが無断欠勤したので同僚が寮を訪ねたところ、意識もうろうとなってベッドに横になっていた。
「ペットボトル症候群で血糖値が急上昇。糖尿病性昏睡の一歩手前の危険な状態でした。体のだるさを感じていたときから糖尿病はあったのですが、甘味飲料の取り過ぎで一気に悪化したのです」

●実例2
Sさん(52歳)はお酒を飲まない根っからの甘党。やや肥満だったが、50歳を過ぎたころから体のだるさを強く感じるようになった。健康診断で肝機能に軽度の異常があるといわれていたが、お酒を飲まないから大丈夫とタカをくくっていた。白目が少し黄色っぽいのが気になっていたが、ある朝突然吐血した。
「SさんはNASH(非アルコール性脂肪性肝炎)で肝硬変まで進み、その合併症である食道静脈瘤が破裂したのです。病院での緊急処置で一命は取り留めましたが、お酒を飲まないという理由で、体のだるさを肝臓病と結びつけなかったのがいけなかったのです」

●実例3
Fさん(38歳)はコンピューターソフトの設計者。この1年体が異様にだるく、朝なかなか起きられないことがしばしばあったが、時には深夜にも及ぶ不規則な勤務からくる疲労と考えて放置していた。首や肩が痛むので、カイロプラクティックにも通っていたが良くならなかった。そんな矢先、ささいなミスを犯したのを苦にして死ぬしかないと思いつめて手首を切った。
「死には至りませんでしたが、うつ病による自殺企図でした。体がだるく首や肩が痛むのはまさにうつ病のサインです。この初期の段階で抗うつ剤を使って治療をしていれば、自殺未遂行為は防げたはずです」

●実例4
Kさん(48歳)は10年ほど前から健康診断で尿にタンパクが出ていると指摘されていたが、放置していた。体もだるかったが仕事が忙しいせいだと考えていた。そんなある日、靴がきつくなり足がむくんでいるのに気がつき、変だと思い病院を受診した。
「腎不全でクレアチニン値が7mg/dl(基準値0.6〜1.1)を超え、このままいくと人工透析という状態でした。症状は体のだるさ程度で、ジワジワと進んでいくのが慢性腎炎の特徴なのです」
 糖尿病、肝臓病、うつ病、腎臓病など、体のだるさに潜む重大病は多い。
「たかが疲れと考えず、だるさに伴うほかの症状も考え合わせて、しかるべき科で検査を受けてください。放置のツケはあまりにも大きいからです」

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