今が旬。アサリは必須ミネラルの宝庫


 3月から4月がアサリの旬である。この季節になると冬の間、砂のなかに深くもぐっていたアサリが表層に上がってくる。そして潮干狩のシーズンになるのだが、春の間のアサリは身が肥えていておいしい。しかし、初夏から盛夏になると産卵期に入って味が落ちる。
 アサリの栄養的な特徴は、必須ミネラルを網羅的に含んでいることと、約10%を占めるタンパク質の必須アミノ酸組成がすぐれていることである。つまり、よいタンパク源であると同時にミネラル源なのだ。だから、これをたっぷり食べた食事は、食後に満足感がある。
 昔は東京湾ではアサリがよく獲れて安かったから、庶民がアサリのたっぷり入った味噌汁を朝食に食べて健康だった。
 イタリーでも、庶民の料理であるアサリソースのスパゲッティの「ボンゴレ」は、アサリから出た汁をソースにするので、アサリをたっぷり使う。それがおいしさの秘密なのだ。
 ポルトガルでも庶民はアサリの口を開かせただけの「ナチュレール」を食卓に出しておき、皆が好きなだけ食べる。
 みな、アサリの栄養を逃がさず殺さず、全部いただくという食べ方で理に適っている。
 アサリ料理のポイントの第1は、加熱を適切にすることである。加熱が過ぎると破壊される栄養素が出て味を落とすし、タンパク質の熱変性が進みすぎて硬くなる。
 鍋に入れてふたをして中火で加熱。アサリの口が開いた時がちょうどよい加熱度になっているので、火を止めてそれ以上の加熱を避ける。
 味噌汁にする場合は、水に入れて中火にかけ、口を開いたら味噌を溶き入れる。水から加熱していく間にタンパク質が変性してアサリ特有のうま味が出るのだ。
 伝統的なボンゴレのレシピを紹介しておこう。

〈ボンゴレ〉
 材料 アサリ1キロ、にんにく2片、パセリ適量、スパゲッティ200グラム。(2人前)
〈作り方〉
(1)アサリを中火で加熱。口が開いたらアサリをボウルにとり、汁は砂を漉(こ)して別の容器にとる。
(2)にんにくをつぶして鍋に入れオリーブ油を加えてふたをし弱火で加熱。
(3)にんにくに焦げ色がついたらアサリの汁を加える。
(4)殻から外したアサリを加える。
(5)刻んだパセリを加える。
(6)ゆでたスパゲッティを加え混ぜ合わせて出来上がり。

●まるもと・よしお 1934年、大分県生まれ。東京大学文学部仏文科卒。作家、栄養学ジャーナリスト、料理研究家。

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