歯周病の最新2大治療法


 歯周病は中高年の約8割がかかっているといわれる。歯と歯肉のすき間にたまった歯垢の中の細菌が毒素を放ち、歯肉に炎症を起こしたり、歯を支える歯槽骨を溶かしてしまう厄介な病気だ。歯周病の進行を阻止するには、普段の歯磨きが大切だが、どうにもならなくなったら歯科医師の治療を受けるしかない。そこで、最新の2大療法について専門医に聞いた。

●レーザー治療
 軽度から重度の歯周病を対象に行われているのが、エルビウムヤグレーザーを用いた無痛のレーザー治療だ。歯垢や歯石を器具を用いて除去するスケーリングなど、通常の手段だけでは治療が難しいケースに威力を発揮する。東京医科歯科大学大学院の渡辺久・助教授が言う。
「歯石や歯周ポケット(歯と歯肉のすき間)にレーザーを照射して、歯石を除去したり歯周ポケットの中の歯周病菌を殺します。時間は歯石を砕く場合が20秒から2、3分、ポケット照射は2〜4分くらい。重症で歯肉を切除する手術が必要な場合でも、手術中にレーザー照射でダメージを少なく歯槽骨の病巣を取り除くことができます。この場合は5〜10分照射します。無痛でキーンという不快な音もありません」
 典型的な事例を紹介しよう。40歳男性のTさんは、前歯の歯肉がよくはれて、出血したりうみが出たりしていた。普通は3ミリ程度の歯周ポケットが、歯周病のために深くなり6ミリにまでなっていた。
「レーザーで歯石を取り、さらに歯周ポケットの中にもレーザーを照射しました。治療回数は1週間おきに通算5回。歯周ポケットは3ミリにまで戻り、出血もうみも出なくなりました」(渡辺助教授)
 レーザー治療は高度先進医療に指定されていて、1回の照射が5800円だ。

●GTR法
 中等度以上の歯周病にかかった歯を助けるための歯周外科手術(フラップ手術)の延長線上にあるのが、歯のセメント質、歯根膜、歯槽骨を再生させるGTR法だ。日本大学歯学部付属歯科病院長の伊藤公一教授が言う。
「局所麻酔をして通常のフラップ手術と同様に歯肉を切開し、歯垢や歯石を除去した上で、歯肉病変部を清掃します。その上で上皮が入り込まないように歯根と歯肉弁との間に遮断膜を置きます。歯槽骨とセメント質の間には歯根膜という組織があり、この中には壊れた組織を再生させる未分化間葉細胞が多く含まれているので、これを遮断膜の下面に増殖させます。この細胞がセメント質にくっつけばセメント質が作られ、骨にくっつけば歯槽骨が作られ、歯根膜そのものも作っていくという再生が起こるわけです」
 通常、新生再生組織は4〜8週間でできるという。遮断膜には体内に吸収されるタイプとされないタイプがあるが、体内に吸収されるコラーゲン膜や高分子膜がよく使われるという。この治療も高度先進医療に指定されていて1回の治療費は約5万〜7万円。
 GTRのほかに今後注目される再生療法としては「エムドゲイン」がある。
「歯周外科手術のときに、豚の歯胚(しはい)から抽出したエナメルマトリックスタンパク質を、歯根面に塗って組織の再生を図るもの。高度な手術を必要とするGTR法と比較して、手術が容易であるという特徴があります」(伊藤教授)
 自費診療で1回約7万5000円かかる。
 歯周病の治療も進化しているのだ。

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