治る高血圧

15〜20%はほかの病気が原因

 わが国の高血圧人口は3700万人といわれるが、そのうちの15〜20%がほかの病気が原因の2次性高血圧。その中で最も多いのが、腎臓病が原因の腎性高血圧だ。腎臓病の治療をすれば高血圧も良くなる例が多いが、見過ごしていると腎不全から透析に至る危険もあるので要注意。順天堂大学医学部腎臓内科・富野康日己教授に聞いた。

 腎性高血圧は、腎臓自体に問題がある腎実質性高血圧と、腎臓の血管に問題がある腎血管性高血圧に大別される。腎実質性高血圧の原因となるのは慢性腎炎、腎盂(じんう)腎炎、糖尿病性腎症など。腎血管性高血圧の原因となるのは、動脈硬化症、大動脈炎症候群、線維筋性異形成などだ。
「腎臓に問題があると血圧が上がるのは、ナトリウムの排泄(はいせつ)が悪くなることや、腎臓で作られて血圧を上げるように働くレニン・アンジオテンシンというホルモンが増える一方で、プロスタグランジンやカリクレイン・キニンなど血圧を下げるように働く物質が減ることなどが原因とされています」
 実例で見ていこう。
 出張中に高熱とのどの痛みが出て、近くの病院で急性扁桃(へんとう)炎と診断されたSさんは、2週間後に目に見える血尿が出て順天堂医院に駆け込んできた。
「微熱、顔のむくみ、尿量の減少、溶連菌感染の所見などから見て、Sさんは典型的な急性腎炎でした。急性腎炎の炎症のために尿量も減り血圧が162―90に上がっていたのです。そこで入院していただき、減塩、低タンパクの食事療法をやり、降圧薬を使って治療したところ、一連の症状は消えて血圧も135―80まで下がりました」
 急性腎炎が治ったのと同時に、降圧薬もやめることができた。

 急性腎炎による腎性高血圧は、自覚症状があるので見つかりやすいが、慢性腎炎によるものや腎血管性のものはなかなか気づかないことが多い。
 40歳男性のGさんは、2年前から162―92の高血圧で降圧薬を飲んでいたが、血圧は142―88までしか下がらなかった。順天堂医院に来て尿検査を受けたところタンパクが3+、潜血反応が2+で、腎機能もBUN22、クレアチニン1・4で低下していた。2年前の健診でタンパクも潜血反応も1+と出ていて再検査を指示されていたが、放置していたのだ。
「慢性腎炎のために血圧が下がり切らなかったのです。アンジオテンシンU受容体拮抗薬とカルシウム拮抗薬の併用で、血圧を130―80まで下げることができました」
 58歳男性のAさんは、180―92の高血圧で2年前から降圧薬を飲んでいた。しかし血圧値は142―80くらいまでしか下がらなかった。検査で低カリウム血症と診断されて詳しい検査を受けるために順天堂医院に来た。
「血漿(けっしょう)中のレニンとアルドステロンが高値で、腎血管性高血圧を疑いました。そこで超音波検査、CT・MRA検査、腎血流シンチグラフィーを行ったところ右の腎動脈に動脈硬化による狭い部分が見つかりました。腎血管性の高血圧だったのです。狭い部分を経皮的腎動脈拡張術で広げたところ、血圧も正常値に下がってきました」

 それではどんな場合に腎性高血圧を疑えばいいのか。富野教授が指摘するのは以下の通りだ。
●降圧薬を使っても血圧がスパッと下がらない
●若いのに血圧が高い
●中年になって急に血圧が上がってきた
●右腕と左腕で測った血圧値に差がある
「こういう場合は尿検査をはじめとする腎臓のチェックを受けてください。腎機能があまり悪くならないうちに治療をすれば、高血圧が治る確率も高いのです」
 あなたの高血圧は腎臓に問題があるのではないか?


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