歯周病菌 こんな病気も引き起こす

心臓病、糖尿病、骨粗鬆症…


 成人で歯を失う原因の第一は、歯周病といわれる。しかも、歯周病をそのまま放置していると、歯が抜けるだけでは済まない。最近の研究で、歯周病は全身の病気に深くかかわっていることがわかってきたのだ。東京歯科大学微生物学講座・加藤哲男助教授に聞いた。

 口腔には300〜500種類以上の細菌がすんでいるといわれる。
「歯垢(プラーク)は、食べ物のかすが集まったものではなく、正体は細菌の塊です。約8割が細菌で、1ミリグラムあたり1億〜10億の細菌がいます。歯周病の原因細菌は、プラークに潜む複数の細菌です。ポルフィロモナス・ジンジバリス、アクチノバシラス・アクチノミセテムコミタンス、トレポネーマ・デンティコラなどで、まとめて歯周病菌(歯周病原細菌)といいます」
 歯ぐきから出血しているような場合は、この歯周病菌が、そこから血液中に入り込む。これがいろいろ“悪さ”をし、さまざまな病気の原因になっているのだ。まずは心臓病である。
「歯周病菌が、血流に乗って口腔から心臓に行って、心臓内膜に付着して増殖すると、細菌性心内膜炎を起こします。また歯周病菌が血管壁に付着すると、防御反応によって作られた化学物質が、動脈硬化に関係すると考えられています。実際、歯周病菌が動脈硬化部位に見つかるということを、カナダや北米の研究グループが発表しましたが、私どもの研究室でも、腹部動脈瘤(りゅう)部位に歯周病菌を見つけています。また心冠状動脈のバイパス手術摘出材料の約20%から歯周病菌が見つかりました」
 狭心症などの動脈硬化疾患は、過食や運動不足からくる生活習慣病と考えられてきたが、新たに「歯周病」という危険因子が加わったのだ。
 生活習慣病の最たるもの、糖尿病にも歯周病菌は関係している。
「歯周病菌の内毒素は、TNFα(腫瘍壊死(えし)因子)を産生させます。これが血中に入りインスリンが血糖濃度をコントロールする働きを阻害するのです」
 境界型糖尿病の人は、歯周病になると、より糖尿病になりやすくなる。すでに糖尿病の人は、糖尿病が悪化しやすいということだ。
「歯周病を治療したら、糖尿病も良くなったという臨床報告も出てきています」
 高齢者ではインフルエンザにも関係している。
「プラークが蓄積していると、ウイルスが吸着しやすくなり、インフルエンザにかかりやすくなります。誤嚥(ごえん)性肺炎も起こりやすい」
 このほか、骨粗鬆(そしょう)症や早産にも関係がある。
 歯周病が進行しているほど歯周病菌も多く、これらの病気のリスクが高まる。歯周病は中高年の8割以上がかかっているといわれる。それだけに歯周病対策が重要になってくるのだが、どうすれば歯周病菌を減らせるか?
(1)食べたら歯を磨く
 特に夜の歯磨きは大切だ。
「唾液の分泌が少なくなる夜は、歯周病菌が増殖しやすいのです」
 プラーク除去効果が優れている電動歯ブラシもいい。フロスや歯間ブラシも使うようにする。
(2)歯肉をマッサージする
 歯みがきのときに歯ブラシを歯肉に軽くあててこする。
(3)エッセンシャルオイルをたらした洗口液でうがいをする
「マヌーカオイル、ティートリーオイルなどのエッセンシャルオイルには、歯周病菌の発育を抑えたり殺菌作用のあることがわかっています」
(4)舌苔(ぜつたい)をとる
 舌苔ブラシなどを使うといい。
(5)体調を整えておく
 過労や睡眠不足で体調が悪いと、菌の働きに手を貸すことになる。
 あなたの歯周病度は?さあ、今日から実行だ。

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