検査数値が正常値を越えた!

 人間30歳すぎればだれだって体のどこかにガタがくるもの。春の健康診断や人間ドックで、検査数値が正常値より高いと指摘された人も少なくないはず。そこで、できれば薬を飲まずに“正常化”したいという人のために、“ここまで”なら生活習慣の改善で正常に戻せるという境界線の目安と、そのノウハウを専門医に聞いた。

●コレステロール値
 薬に頼らず生活改善で検査数値を正常化できるかどうかは、3カ月間の食事療法と運動療法をやった結果でわかる。
「食事療法は次のポイントを中心にやってください。肥満なら摂取カロリーを減らす、脂肪とコレステロール含有量の多い食品を控える、肉より魚を選ぶ、玄米、黒パン、野菜など食物繊維の豊富な食品を多く取るの4つです。運動は1日30分の速足歩きをやってください」(中谷内科クリニック・中谷矩章院長)
 これを真剣にやって3カ月後、コレステロール値のみが高い人なら、総コレステロール値が240未満、LDL(悪玉)コレステロール値が160未満まで下がっていればセーフだ。
「中性脂肪値、血糖値、血圧値、HDL(善玉)コレステロール値のうち、異常が2つまでなら、目安は“220未満・140未満”、3つ以上か糖尿病の人は“200未満・120未満”です」(中谷院長)
 3カ月でこの境界線をクリアできるかどうかが勝負の分かれ目だ。これをクリアできた人は、前述の生活習慣を続ければ、ずっと薬とは無縁でいられる。

●血圧値
 上(収縮期血圧)140以上、下(拡張期血圧)90以上が高血圧と定義されているが、「上が160、下が99までなら、生活習慣の改善で血圧を下げることが可能です」(中谷院長)。
 まず1日の食塩摂取量を6グラム未満にして、減塩生活に徹する。そのノウハウは、(1)食卓に塩やしょうゆを置かない(2)味付けは薄めにする(3)漬物は浅漬けに(4)めん類のつゆは残す(5)塩やしょうゆの代わりにレモン、ゆず、酢を使う(6)生野菜や果物などカリウムの多い食品を取ってナトリウムの排出を促す――などだ。
 これに前述のような「減量」と「運動」を加える。3、4カ月で「上140未満、下90未満」にできれば、薬はいらない。

●血糖値
「過去1、2カ月の血糖の状態を表すHbA1c(グリコヘモグロビン)が8以下(正常値は5.8まで)なら、食事療法と運動療法で、糖尿病から境界型糖尿病、さらに正常の状態にもっていくことが可能です。ただし糖尿病が発症してから何年も過ぎていないこと、網膜症や神経障害など糖尿病の合併症がないこと、高血圧や高脂血症もないことが前提になります」(かたやま内科クリニック・片山隆司院長)
 2、3カ月努力してHbA1cが下がりだしたらセーフだから、そのまま続ける。
「ただし生活習慣の改善も自己本位ではだめ。糖尿病の専門医の指導の下にやるのがコツです」(片山院長)

●尿酸値
 腎臓結石や痛風発作がないなら、数回尿酸値を測定して常に8以上(正常値は7まで)あっても、生活習慣の改善で正常化できる。
「薬で尿酸値を下げるのは簡単ですが、努力して生活習慣を改善して下げた方が、はるかに価値があります。痛風発作を防ぐだけでなく、高尿酸血症の背景にあるメタボリックシンドローム、すなわち動脈硬化の危険を遠ざけることができるからです」(聖マリアンナ医科大学難病治療研究センター長・西岡久寿樹教授)
(1)肥満の人は減量する
(2)水分を1日2リットルはとる
(3)酢や野菜などでクエン酸を多くとって尿を酸性に傾けすぎない――の3つがポイントだ。
「半年くらいで尿酸値が下がってくるはずです」(西岡教授)
 自分で努力して得られた効果は、薬よりはるかに大きいことを信じて頑張ろう。

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